
2026年2月19日に開催したオンラインイベントにて、フィリピン現地スタッフが子どもたちの暮らしについて報告しました。厳しい暮らしの中でも懸命に生きる2人の子どものストーリーをご紹介します。
奨学生になって大きく変化したジェームズの暮らし

ペレーズ地区教育プログラム担当
リザ・メルカド

ジェームズと出会ったのは、2017年のことです。両親は別居しており、父親からの経済的な支援がないため、母親が5人きょうだい全員を支えていました。朝ごはんが用意できず、コーヒー1杯だけで学校へ行くことも少なくありませんでした。学校に履いていく靴や学用品もそろえられず、通学のための交通費も出せません。母親のジョスリンさんは、地元の家具工場で働く日雇い労働者で、十分な生活費を稼ぐことができなかったからです。台風や悪天候のときには仕事が休みになるため、収入がありません。朝だけ白米を食べ、昼食や夕食はゆでた芋(キャッサバ)やバナナだけという日もありました。
そんな中、アクセスの子ども教育プログラムを知ったジョスリンさんは、迷わずプログラムに応募しました。そうして2017年、ジェームズはアクセスの奨学生となりました。ジェームズの家族はとても喜びました。制服、カバン、靴、文具類のすべてを十分にそろえることができたからです。新しい学用品を持てたことで、ジェームズは学校でいじめられることもなくなりました。
奨学生になって ジェームスは以前よりも熱心に勉強するようになりました。アクセスが実施する子どもの権利ワークショップからの学びも、彼を大きく成長させました。彼は現在、学校行事もアクセスの活動にも、積極的に参加しています。
高校3年生(17歳)になった今、ジェームズはとても幸せです。彼の家族も幸せを感じています。自分の才能を自由に表現し、自分の意見をのびのびと伝えられるようになったからです。
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困難の連続の中で子どもたちを支える私たちの活動

マニラ市トンド地区教育プログラム担当
メイリン・アイソン

私からは、トンド地区に暮らすジェネルのストーリーをお話しします。彼の状況に私は深く打たれ、NGOによる支援がなぜ必要なのかを痛感しました。
ジェネルは、公立小学校に通う小学4年生です。3人きょうだいの末っ子で、発話障がいがあります。はっきりと話すことが難しいのです。障がいのため、ジェネルはいじめられることがよくありました。恥ずかしさや悔しさから泣いてしまうことも何度もあり、彼の自信に大きな影響を与えていました。
一家は廃材や寄せ集めの材料で作ったとても小さな家で暮らしています。台風や災害があるたび、崩れてしまうのではないかと心配しながら生活しています。彼らが住むトンド地区ヘルピングでは、火災も頻繁に起こります。そのため、夜もなかなか安心して眠ることができません。
2024年当時、家族を支えていたのは母親だけでした。廃材やリサイクル品の仕分けをしたり、ときには皿洗いの仕事をしていました。収入は1日150~200ペソ(400円~550円)ほどで、一家の食費や日用品、教育費をまかなうのがやっとでした。こうした困難の中でもジェネルは、学校に通い続けたいと強く願っていました。
2023年に彼がアクセスの奨学生になってから、小さいけれど確かな変化が現れました。必要な学用品をアクセスから無償で受け取れるようになったことで、彼は自尊心を取り戻しました。
子どもの権利ワークショップでは、話すことは依然として難しいながらも、少しずつ積極的に参加するようになりました。以前は笑われることを恐れていましたが、今では自分の気持ちを言葉にしようとしています。子どもの権利ワークショップのなかで私たちは、子どもたちが自由に気持ちや感情を表現できる場をつくっています。そうしたワークに参加する中で、ジェネルは「自分の声が聞かれ、受け止めてもらえている」と感じられるようになってきたのだと思います。
そんな風に暮らしが改善してきたかのように見えたジェネルと家族に、大きな悲しみが襲い掛かりました。2025年12月23日、ジェネルの母親が乳がんのため亡くなったのです。
母の死後、一家の生活はさらに厳しくなりました。薬物問題を抱える父親は家族のもとを去りました。それ以来、長女が大学に通いながら、焼売や通販商品の梱包の仕事で家計を支えています。
大きな喪失を経験しながら、ジェネルは今も学ぶことを諦めず、学校に通い、子どもの権利ワークショップにも定期的に参加しています。家族や周囲の大人からの支えの中で、ジェネルは少しずつ自分の価値を感じ、未来への希望を持てるようになってきているように思います。
フィリピンのスラム地域では、ジェネルと同じような困難を経験している子どもや家族が少なくありません。貧困、心身の障害、不安定な生活、喪失といった困難です。そんな中、皆さまのご支援のおかげで、ジェネルような子どもたちは家族以外の大人とのつながりを持つことができ、学び続けるチャンスを得られています。
日本の皆さん、フィリピンの子どもたちとその家族にいつも寄り添ってくださって、本当にありがとうございます。
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