子どもに教育を

フィリピンでは、5人中1人の子どもが、小学校を卒業できないまま大人になっていきます。

基礎教育を受けることは、子どもの最も重要な権利の一つです。
子どもたちにとって小学校は、以下のような場です。

  • 生まれ持った能力を花開かせるための訓練の場
  • 読み・書き・計算といった社会生活を営むための基礎を身につける場
  • 集団で互いに協力して物事にとりくむ力を伸ばす場
  • 自尊心を育む場

しかし、貧しさのために小学校すら卒業できない子どもたちが大勢いるのです。

そんな子が一人でも減るように。
私たちは、次のような内容の「子ども教育プログラム」を2地区で実施しています。

子ども教育プログラムー3つの柱

【1】就学サポート

文房具セットを受け取って大喜びの子どもたち

就学に必要な文房具、制服、鞄などの物資や、学校に納める諸費用の一部を支給しています。

2019年度実績:240名

【2】子どもの権利を守る

子どもの権利セミナーの様子
子どもの権利セミナーにて。足の指を使って字を書くことで、幼児にとって文字を書くことがどれほど難しいことかを実感するワークショップ。

以下のような取り組みを通じて、子ども・大人の「子どもの権利意識」を高め、権利侵害のないコミュニティづくりを進めています。

  • 子どもたちと保護者を対象とした、子どもの権利セミナーを開催(「子どもの権利とは」、「子どもの権利を侵害しない子育てのしかた」等)
  • 保護者を対象に、子どもの権利保護の先進地域を訪れる研修旅行の実施
  • 保護者会や子ども会を定期的に開き、子どもたちが困ったときに助け合える関係づくりを後押し
  • 保護者とともに村議会に働きかけ、「子どもの保護のための住民協議会」を設立
  • 体罰、いじめ、育児放棄といった子どもの権利侵害が見つかったら、地域の保護者と協力して解決に向けて行動

こうした取り組みの結果、事業地では少しずつ体罰が減少。深夜に子どもが一人で出歩くことを禁じた条例を制定する村も出てきています。

2019年には、保護者の有志が「生きる権利」や「育つ権利」がきちんと守られるようにと、毎週少しずつ貯金をはじめ、貯まったお金でビタミン剤を購入して子どもたちに配布するプチ・プロジェクトが取り組まれました。

【3】生きる力(ライフ・スキル)を伸ばす

自分の手形に大切な人の名前を書き込んで、みんなの前で発表するワークショップ。自分の想いや考えを言葉にして伝える力を伸ばします。
指導役のスタッフの問いかけに、はにかみながら答える子どもたち

貧困の中で暮らすということは、最低限の営みさえ簡単に壊れてしまうということであり、困難に直面した時に、それを克服する力が小さいということです。

そこで私たちは、子どもたちが困難を乗り越える力を養おうと、「生きる力を伸ばす授業(ライフ・スキル・トレーニング)」を実施しています。

  • 土曜日の補習授業(年20回程度)
  • サマークラス(夏休みに12回程度)

子どもたちが、貧困、いじめ、虐待などによる苦しみを乗り越えていくためには、「自分の辛さ・苦しさを自覚する力」、「言葉などで伝える力」、「周りに助けを求める力」を身につけることが重要です。「生きる力を伸ばす授業」では、絵を描いたり話し合ったりといった、子どもたちが楽しめる方法でそうした力を養っています。

子ども教育サポーターの協力で実施しています

「子ども教育プログラム」は、子どもたちと日本のサポーター(子ども教育サポーター/年18,000円)が力を合わせて、小学校卒業をめざす活動です。

応援する子どもからの写真・手紙・報告書で、成長を感じることができます。子どもたちも、サポーターさんからのお手紙に励まされ、卒業までがんばることができます。

これまでの成果

1998年から実施しているプログラムです。2018年度末までに、360人以上の卒業をサポート!現在、年間235人を支援しています。

80年代~90年代に支援した子どもたちの中には、フィリピン教育省に就職した人、警備員になって安定した収入を得られるようになった人もいます。

給食プログラム

子どもたちに、お昼ご飯(または軽食)を提供する活動です。

給食の必要性

貧しい家庭では、朝ご飯を食べられないことがよくあります。
甘いインスタントコーヒーだけで済ませたり、インスタント麺一袋をきょうだい3人で分けて食べるといった家庭が少なくありません。

ここ数年で、少しずつ学校給食が導入されはじめたフィリピン。まだ多くの地域では、全校生徒向けの給食は実施されていません。お昼休みに家に帰って昼食をとったり、家が遠い子は売店で軽食を買って食べたりします。家に現金のない日にはお昼ご飯を食べられないことも。

そうすると、子どもたちは空腹のせいで授業に集中できなくなります。また、学校に行きたくなくなる子もでてきます。中には栄養失調になり、病気にかかりやすくなる子どももいます。

アクセスの給食プロジェクトの3つの効果

  1. 栄養状態の改善
  2. 出席率・学力の向上
  3. 保護者同士の協力関係が築かれ、助け合える環境が整っていく

保護者が当番制で調理ボランティアを担ってくれています。メニュー作り、食材の買い出し、調理、後片付け、会計管理を保護者同士で協力して行うことで、困ったときに相談しあい、支えあえる関係が作られていきます。

地域ごとのニーズに合わせて

  • 都市スラムであるトンド地区では、株式会社ドロキア・オラシイタ様のご支援により、週3回の給食を子どもたちに提供しています。週3回の給食が子どもたちにとって大切な栄養源になっており、学校に行こうと思うモチベーションになっています。(2019年度実績)
  • 農漁村であるペレーズ地区では、土曜日の補習授業(年20回)や、夏休みのサマークラス(12日間程度)で軽食を提供しています。資金に限りがあるため、保護者と相談した上で、現在は週1回の軽食のみ実施しています。(2019年度実績)

企業との協働事業としてスタート

給食プログラムに最初に力を貸してくださったのが近畿労働金庫の皆さまでした。
現在では、複数の企業、団体、個人によって給食事業は支えられています。

  

これまでの成果

2017年度末までに、30万食以上の給食を、子どもたちに届けました!

これまで実施してきたその他の教育支援活動

幼稚園運営

小学校進級のための大切なプロセス

幼稚園は読み書きや数の数え方などを学ぶとともに、一定の時間椅子に座って集団で学習することを経験するという、小学校に進級するための重要な過程です。

アクセスでは、以下の2地区において幼稚園の建設・運営を行っていました。

しかし、フィリピン政府が就学前教育に力を入れるようになり、幼稚園年長組が義務教育化されたことなどから、アクセスとしての幼稚園運営は終了することにしました。

給食や子どもの権利セミナーも開催

子どもたちの年齢に応じた教育を行うだけでなく、給食を実施するとともに、保護者向けに、子どもの権利を侵害しない子育ての仕方についてセミナーを行っていました。

これまでの成果

2018年度末までに、1000人以上の子どもたちがこれらの幼稚園で学びました。

小学校校舎の建設と教育支援

16年間、小学校のなかった村

1991年6月にピナツボ火山が噴火。大阪府とほぼ同じ面積が、大量の火山灰と土石流に埋まり人家や農地が大きな被害を受けました。

中でも、パンパンガ州ポーラック町ミトラ地区は、もともとあった村が10メートルにも及ぶ厚さの土石流に覆われてしまいました。被災後16年が経っても復興は進まず、小学校すら建設されないままになっていました。

村の再建支援と小学校校舎の建設

アクセスは、1998年よりこの村の再建支援事業を進めてきましたが、2007年からは以下のように、教育面での復興に力を入れてきました。

  • 2007年 村の礼拝堂を使って幼稚園を開設・運営
  • 2008年 小学校2教室の校舎の建設
  • 2010年 小学校校舎をさらに2教室建設、校舎はフィリピン教育省に寄贈
        小学校に通う児童に給食の提供を開始
        教師給与の支援など小学校の運営支援
  • 2014年 大人向けの社会教育プログラム開始
  • 2015年 被災後初の小学校卒業式/子どもの権利セミナーを定期的に開催
  • 2019年 一定の復興を果たしたため、3月末で被災地での事業を終了

フィリピン教育省の活動の刺激に

こうした私たちの活動に後押しされて、フィリピン教育省も2014年に小学校4教室の校舎を建設し、2008年には34名の生徒で始まった小学校の授業も、現在では幼稚園2クラス、小学校6学年が同地区で就学可能になっており、200人以上の子どもたちが就学できるようになっています。

これまでの成果

教育省による幼稚園・小学校の運営体制が整う中で、私たちの活動も一定の歴史的役割を果たしたと言えます。2019年度からは新たなかかわり方を模索していくことになります。