新型コロナウィルスによるロックダウンの状況下で、寄付つき商品パッケージの企画を提案した、現地フェアトレードスタッフのジセルが、ココナッツ雑貨生産者のアーリーお母さんに電話インタービューをしてくれました。寄付つき商品販売プロジェクトのボランティアメンバー2名によって翻訳された、アーリーお母さんの困難をぜひご一読ください。
「私は家族のために強くなり、一生懸命祈るしかありません。」
私たちは3世帯同居で暮らしていますが、大人全員がロックダウンの影響で仕事ができていません。助け合って子どもたちの世話をして過ごしています。今、私たちにできることは、この状況が終わることを神に祈るのみです。
ロックダウンが始まる直前に、2歳の孫は5日間入院しました。実際は5日以上入院しなければいけませんでしたが、私たちには病院のお金を払う余裕がありませんでした。お医者さんには孫は肺炎だと言われました。私は心が空っぽになり、どうすればいいかわからなくなってしまいました。幸いにも孫の状態は安定してきていますが、それでも5種類の薬を購入する必要があります。
まだ半分しか支払いができていないので、病院には4000ペソ(約8000円)(訳者注:4,000ペソあればお米が約100kg買えます)の支払いが残っています。また、ロックダウンのせいで孫を再診させることができていません(訳者注:薬を買うための外出は許可されているが、金銭面とコロナウィルスの感染リスクを考えると買いに行くことができないそうです)。また、病院のあるアラバット町に行く度にかかる300~350ペソ(約600~700円)の交通費のことも考えなくてはいけません。
これまでに一度ですが、自治体から食料支援がありました。米3kg、イワシの缶詰3缶、インスタント麺3袋です。
政府による貧困層支援プログラム(4Ps)の受益者の人たちには、ロックダウン中の補償として金銭的支援があると聞いています。でも、私たちは4Psの受益者ではないので、政府から金銭的支援を受けられるかわかりません(※)。
ここのところヤシの実の売り値の相場はとても低く、ただでさえ機会の少ない漁業も許されていないので本当に厳しいです。ロックダウンのため魚を港にもっていくこともできません(訳者注:自家消費用に獲ることだけは許されているとのことです)。私は家族のために強くなり、一生懸命祈るしかありません。
(※)政府は、低所得者世帯への経済支援として「社会改善基金」を設け、社会福祉開発省を通じて必要な家庭に提供するという考えを発表しています。この経済支援は、4Ps世帯(平時から「貧困層で、就学年齢の子どもがいる家庭」として経済的支援を受けている世帯)は必ず受け取ることができると発表されていますが、4Psの対象外でも貧困層の家庭(例えば貧困で子どものいない世帯など)をどう選ぶか・線引きするかが、問題になっています。
また政府は、各自治体に「貧困世帯リストを作成して社会福祉開発省に提出するように」と命じていますが、このリスト作成にあたってえこひいきがあるという批判が相次いでいます。
生産者と現地スタッフを大きく励ました、寄付つき商品プロジェクト
アーリーお母さんをはじめとした7名の生産者は仕事ができず、生産者をはじめとしたアクセスの事業地の人びとをサポートする現地スタッフも動くことができない―
そんな先が真っ暗な中で始まった寄付つきフェアトレード商品販売プロジェクトは、本当にたくさんの方の応援のおかげさまで、132セットを販売することができました。これにより、働けない期間の生活のための寄付を生産者に届けることができると共に、販売し在庫がなくなった分の商品をすぐに、そしてたくさん、生産者に発注し、仕事にとりかかることができます。
しかし、今回特筆できることは、寄付や発注と言ったような実際的な支援ではない「気持ちの面」で、先の見えない不安の中にいる生産者、そして現地スタッフをもとても勇気づけることになったことでした。
寄付つき商品セットの販売状況やご注文くださった方の声を伝えたところ、アーリーお母さんからのメッセージが届きました。
“Good day to everyone! As one of the makers, I am asking for support due to the current pandemic. I hope you understand as to why we are asking for support. Thank you, thank you so much to everyone! Until now, I am worried about my sick grandchild as we still cannot afford to buy all his medicines. Sorry I have to overshare.”
「みなさん、こんにちは!一生産者として、今回のパンデミックに関するご支援をお願いしてきました。私たちがなぜサポートを必要としているかということを、ご理解いただけましたらさいわいです。みなさま、本当に感謝しています。ありがとうございます!これまでずっと、病気を抱えている孫の心配をしてきました。治療に必要な薬をすべて用意してやるだけのお金がないからです。個人的な話なのですが、お話せずにはいれられませんでした。ごめんなさい。」
また、アクセスフィリピン事務局長のリサさんからも、「商品を買ってくださった方のお考えや気持ち、そしてどんな風に商品を見てくださっているかを知れて、このような大変な状況の中ですが本当に元気づけられました。生産者のみならず、私たちアクセスフィリピンのスタッフにとっても、励みになります」というメッセージが送られてきました。
日本もフィリピンも、そして世界中が、この度の新型コロナウィルスにより計り知れないほど大きな打撃を受けました。それは、それまでの暮らしが大きく崩れてしまうくらい劇的な変化であったとともに、私たちの生活にも心にも非常に大きな試練を突きつけてきたように感じます。
もちろん、金銭的に非常に苦しい状態にあるアーリーお母さんをはじめとしたフィリピンの人びとの生活を、全面的に支援し、すべての不安から解放され手放しに喜べるような状態をつくることができた訳ではありません。
ただそのような状況の中でも、一人ひとりの小さな「できること」が集まって、少し大きめの「できること」になり、それが結果的に海を越え、フィリピンの生産者とスタッフに気持ちが伝わり、勇気づけることができたという結果を生みました。
それが意味することはつまり、フィリピンの事業地の人から、日本でかかわってくださるすべての方を含めて、アクセスにおけるフィリピンと日本がより近くなりそのつながりがより強固なものになってきた、ということなのかもしれません。
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