約1か月間の外出禁止令
新型コロナウイルスの影響で、世界中が日常を失っている中、フィリピンの人々の暮らしも大きく揺さぶられています。3月16日(月)時点で、142人の感染者と12人の死亡者が出ていたフィリピンですが、ドゥテルテ政権は3月17日から4月13日までの約1か月間、マニラ首都圏を含むルソン地域全域に対して「強化されたコミュニティ隔離措置(Enhanced Community Quarantine)」を発令しました。対象となる地域に暮らす人々に対する外出禁止令です。
電車、タクシー、バス、ジープニー(乗合ミニバス)、トライシクル(三輪バイク)といった公共交通機関が停止。外出禁止令が出てからのマニラは、排気ガスが激減してすっかり空気がよくなり、いつもの喧騒もなくなっているとのことです。
食料や日用品を生産する企業は操業を続け、銀行、スーパー、コンビニといった小売店も営業をしているようですが、それ以外の企業や公共施設などは閉鎖。アクセス・フィリピンの職員も、各自、在宅でできる仕事をするしかない状況です。政府は「日用必需品へのアクセスのため外出できるのは、一家庭につき一名のみ」「高齢者、妊婦、持病のある人は外出禁止」といったルールも発表し、警察官や自治体職員などが、住民の外出をモニタリングしているそうです。
収入が途絶えた人々も
この外出禁止令が発令されて最も心配なことは、インフォーマルな仕事で働く人々のことです。ゴミの中からリサイクル可能なものを拾い集めて日収を得る人々、路上の物売り、屋台のおやつ売り、日雇いの建設労働者といった人々は、「外出できない=働けない=収入が途絶える」ことになります。そうした人たちのほとんどは貯金がありません。
アクセスの元スタディツアー参加者の一人は「Facebookメッセンジャーで、フィリピンのスラムに住む友人から連絡がきた。外出禁止令のせいで生活がかなり苦しくなったので助けてほしいとう内容だった。」と話します。
自治体からの支援も始まったが
アクセス・フィリピンの事務局長であるリサさんにも、状況を聴きました。
インフォーマルな仕事で、日収を稼いで暮らしてきた人たちにとって、外に出られず動き回れないことは、本当に大変なことです。バランガイ(日本における区や村)当局は住民に対し、外出しないよう厳しく呼び掛けています。フィリピン政府は、地方自治体に対して、最も影響が大きい住民(経済的に厳しい状態におかれている世帯/日雇い労働者など)に食料品パックを配布するよう助言しています。ケソン市など、既に食料品パックの配布が行われた自治体もありますが、次がいつになるかはわかりません。収入が断たれた人たちが、自治体からの支援だけでこの状況を乗り切れるかどうか…。
ケソン市パヤタス地区でアクセスが運営してきた幼稚園のマーリン先生は、「夫が袋詰め作業の仕事をしてきたが、外出禁止令が出て働けなくなった。」と話します。同幼稚園の用務員だったテスさんも、トライシクル(三輪バイク)の運転手だった夫が働けなくなっています。
農村部ペレーズの人々は
もう1つのアクセス事業地であるアラバット島ペレーズ地区では、まだ食料品パックの配布は行われていません。漁師が漁に出ることは許可されていますが、海が荒れる日の多いこの時期、漁獲量はわずかです。例年なら、建築や運送、炭焼きといった他の仕事で追加収入を得て生計を立てますが、外出禁止となった今は、それができません。
アラバット島はもともと食用の農作物の生産がさかんではなく、多くの食料や生活必需品を島の外から仕入れてきました。今はそうした食料品等の流通量も減っており、住民の間では不安が広がりつつあるようです。
経済的にも地理的にも難しい環境で暮らしてきた人たちほど、外出禁止令による影響は大きいことがわかります。そうした人たちの力になりたいと思うものの、アクセスの現地スタッフ自身も外出することができない現状では、動きがとれません。フィリピン政府および自治体が、適切な対策をとってくれることを願うとともに、新型コロナの感染拡大がうまくコントロールされ、早期に外出禁止令が解除されるよう祈るばかりです。
アクセス日本では、新型コロナウイルスの感染拡大にともない、2020年2月~3月に実施予定だった2つのスタディツアーの開催を見送りました。今後の動向を見ながら、2020年8月のスタディツアー開催について検討していきます。
アクセス事務局長 野田沙良
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