「生きる力・変える力を伸ばす」を最大化するために~2023年の挑戦~

理事長就任にあたっての想いと感謝

理事長 野田さよ

今がいちばん充実、「力を伸ばす」活動

フィリピンの貧困地域で「子どもに教育、女性に仕事」を届ける活動を続けて34年。アクセスの活動は今、これまででもっとも充実している、と感じています。

子どもへの教育支援は過去最大の320人に。女性や若者に働くチャンスを届けるフェアトレード事業も着実に売り上げを伸ばしていますし、スタディツアーやインターンシップには年100~200人の日本の若者たちが参加してくれています。

これらの活動を行う中で大切にしてきたのは、「生きる力・変える力を伸ばす」ということです。モノやお金を届けるだけの支援に終わらせず、「生きる力・変える力」を伸ばし、協力して困難を乗り越えられるようにしていく。それが、アクセスが何より大切にしてきたことです。

そんなアクセスの活動を、守りたい。もっともっと、発展させたい。そう願って、私はアクセスの理事長に就任することを決意しました。

私がアクセスで働き続けてきた理由

私は大学4回生の時にアクセスと出会いました。考えたり話し合ったりすることが大好きだった私でしたが、大学に入っても本音で語り合える友人はほんのわずかで、物足りない思いをしていました。そんな中で参加したアクセスのスタディツアーでは、厳しい貧困の中で生き抜く人々と出会い、価値観がガラッと変わりました。また、ツアーには参加者同士が腹を割って語り合える場がありました。そして帰国後には、課題解決のために行動する場も用意されていました。社会課題とは「偉い人たちが解決してくれるもの」ではなく、「私たちの手で解決していくもの」なのだということを肌感覚で学べた場所がアクセスでした。

私はそうした経験をもっと多くの若者に届けたいと思いましたし、フィリピンで出会った友人たちが貧困で苦しまずに済むよう、教育やフェアトレードによる現状改善に取り組み続けたいと思いました。同時にアクセスは、私自身が「のびのびと自分のありたい自分でいられる」居場所でもありました。

以来20年を経て、ようやく今、私はアクセスの独自性を自分なりの言葉で語れるようになってきました。特に大事だと思っているのは、次の7つです。

  1. 当事者の声に丁寧に耳を傾け続ける
  2. ニーズに合った活動を論理的に組み立て実践する
  3. 社会を変えるのは「私たち」という自覚をもつ
  4. 生きる力・変える力を伸ばす(エンパワメント)
  5. 力を合わせ、ともに変えていく(協働)
  6. 支援する側・される側を固定せず、相互に力を伸ばし合う
  7. 貧困が生み出される構造から目をそらさない(私たちも原因の一端を担っている)

これらは私がアクセスを好きな理由であり、アクセスで働き続けている理由です。

アクセスを進化させたい

何でも話し合えるチームへと成長してきたトンド地区担当スタッフたち

この5年、私はこれら7つを守りながら、アクセスをもっと進化させたいと思うようになりました。特に「エンパワメントと安心」という視点での進化です。

「エンパワメント」とは、一人ひとりの中にある「力」を信じ、その力が最大限発揮されるようサポートしていくことだと考えています。貧しく教育を受けていない人であっても、その人の中に困難を乗り越えていく力はある。モノ・カネを届ける一時しのぎの支援ではなく、その人の力を引き出し、その人自身の力で乗り越えていけるようにすることです。

その時、個々がバラバラに頑張るだけではなく、他者と協力して、相互にエンパワメントしあいながら、より大きな力を発揮できるようになっていくことがとても大切なのだということも、アクセスから学びました。

でもこの10年、それがうまく機能しない場面に何度か直面しました。どうしてだろうと何年も考え続けてきた結果、辿りついた私の結論は、「エンパワメントは、場に安心がないとうまくいかない」ということでした。

人は、安心して話せる空間でこそ、本来の力を最大限発揮できるのだと思います。多くの人は「こんなこと言っていいのかな」「この場ではこれは言わない方がいいかな」といったことを常に考えています。その不安・躊躇いを払拭しなければ、本質的な議論は成立しませんし、良い議論のないところに、適切な課題解決は実現しません。

こうした躊躇いは、年齢・性別・経済的立ち位置・上下関係などで弱い立場に置かれている人たちほど抱えやすいものです。また、主流派と異なる意見を持つ人や、マイノリティ的立ち位置の人ほど、発言を自粛してしまう傾向もあります。表面的な関係や、形式的な場ほど、そうした躊躇いは起こりやすいようにも思います。

私は自分の経験から「アクセスは安心して議論できる場を提供してくれる組織」だと思いこんでいました。しかし実際には、置かれている立場や関係性によって、その見え方は様々だということに気づきました。

以来私は、安心できる空間を広げようと模索してきました。フィリピンとの会議の雰囲気を変えたり、理事会での報告の仕方を工夫したり、職員との関係性を構築しなおしたり、インターンやボランティアとの対話の仕方を試行錯誤したり…。

自分を繕ったり偽ったりしなくてもいい場、本音を言うことが活動全体に貢献するという場づくりのコツを探ってきました。おかげで、かなり高い確率で「安心できる対話の場」を再現できるようになってきました。うれしいことに、フィリピンの現地スタッフたちもまた、それぞれのやり方で「なんでも話し合える関係づくり」に力を注いでくれるようになり、良い変化がこの数年続いています。

その結果として、フィリピンでも日本でも、確実に活動の質が上がり、「生きる力・変える力」が伸びてきていることを実感しています。今私は、この方向での進化を、もっと加速させたいと考えています。

人と人をつなぐのも私の役目

アクセスには、34年の歴史を共有してきてくれた800人以上の仲間がいます。関わり方は様々ですが、それぞれの立場から、アクセスを本当に大事に思ってくれていて、何かできることがあるならばぜひ…と言ってくれます。

ただ、今はまだその「想い」をうまく有機的につなぎきれていません。変化の種は蒔かれはじめているので、その種が芽を出し、花を咲かせ、実となるように、うまく繋いでいく必要があります。それがうまくいけば、アクセスの強みが最大化され、大きなエネルギーになっていくはずです。

そのためには、私が明確に組織を引っ張っていこうとしている姿を見せる必要があると思うようになりました。正直、組織のトップになることへの怖さや不安がなかったわけではありません。それでも、「一歩踏み出さなければならない時が来ている」という思いから、理事長に就任することを決意しました。

困難を乗り越える力を届けてくれてきた皆さまへの感謝

これまでアクセスとともに歩んできてくださった皆さま。皆さまの存在によって、私たちは何度も何度も励まされてきました。言葉にできないような困難に直面した時も、心折れずに向き合い続けてこられたのは、皆さまからのあたたかいお言葉やご寄付があったからです。力になり続けてきてくださった皆さまに、あらためて心からお礼申し上げます。

アクセス2023年前半の大きな動き

1月1日
理事長交代を発表
1月26日~
新職員の採用活動スタート
3月2日新職員、決定
3月4日~クラファン開始 
4月11日新職員が勤務スタート
クラファン終了
279人、353万円のご寄付】
6月24日アクセス感謝祭(総会)にて 2023年度の事業計画を承認

新理事長の想いに共感してくださった皆さんとともに成功させたクラウドファンディングでは、279人の方々より353万円のご寄付をお寄せいただきました。そしてそのご寄付によって、頼もしい新職員を採用することもできました。ご寄付や情報の拡散などでご協力くださった皆さま、本当にありがとうございました!

「本気でとりくむ力」が魅力の新職員

 塩田 真也
(しおたまさや)

学生時代から国際協力を仕事にしたいと思い、10年ほどかけて民間企業、海外駐在、青年海外協力隊などで修行をしてきました。アフリカと中東の居住経験が長く、東南アジアの経験は乏しいですが、アクセスに新しい知見やノウハウを取り入れ、活動の質を高めたいと思っています。今年はフェアトレード事業とファンドレイジングを中心に活動します。イベント等にも出ていきますので、お会いする機会があればよろしくお願いします。

2023年度、3つの頑張りどころ

子どもの権利を学ぶ補習授業にて、グループで描いた絵を手に

日本で大きな決断を重ねていた間、フィリピンのスタッフたちも日々、現場での活動を充実させてくれていました。特に、フィリピンの子どもたちや保護者に子どもの権利を伝える活動は、年数を重ねてきたこともあり、とても充実してきました。子どもの権利を大切にした子育ての仕方について学んできた保護者からは、「すぐにカッとなって叩いたり怒鳴ったりしてきた自分のふるまいを見直すようになった」、「落ち着いて子どもの話にも耳を傾けるように心がけたことで、子どもとの関係がずっとよくなった」といった声が届いています。

物資や資金を配るだけでなく、子どもを取り巻く大人たちの内面に働きかけることで、子どもたちが安心して成長できる環境をつくりだす支援が着実に前進しています。

そうした子ども支援分野での取り組みを継続しながら、2023年度は新職員とともに、次の3つに特に力をいれて取り組んでいきたいと考えています。

フィリピンでの
スタディツアー再開

対面 56人 / オンライン 55人

フェアトレード事業改革
課題分析と販路拡大の挑戦

35周年に向けて皆さまとともに

私たちが実現したいのは、「貧困や人権侵害の痛みがあっても、支え合って乗り越えていこうとする人と人のつながりがあふれている世界」です。そのために、皆さんといっしょに力を合わせ、「生きる力・変える力を伸ばす活動」をもっと多くの人たちに届けていきたいと考えています。

2023年度は、スタディツアーやフェアトレードを切り口として、私たちの活動を多くの人に知ってもらい、参加してもらう一年にしたいと思います。身近に、海外旅行やボランティアに関心のありそうな若者がいたら、ぜひスタディツアーのことをご紹介ください。また、SDGsやエシカル消費に関心の高い企業の方がお知り合いにいらっしゃいましたら、アクセスのフェアトレード商品の魅力をお伝えいただければ幸いです。

10月1日でアクセスは35周年を迎えます。アクセスがここまで活動を続けてこられたのは、皆さまからのさまざまな形でのご助力のおかげです。つないでいただいたご縁、助言や励ましの言葉、会費や寄付によるご支援。そのどれか1つでも欠けていたら、今の私たちはありません。そんな皆さまと、これからも困難をともに乗り越え、うれしい変化をいっしょに喜んでいけたらと願っています。

(了)


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