「それにしても、なんで子どもの権利?」 理事長の気まぐれ日記

アクセス理事長の野田さよです。なんかちょっとわかりにくい「子どもの権利」について、今日は私の想いを書いてみます。

「さよちゃんは保育園と幼稚園、どっちに行きたい?」まだ幼かった私に、母はわかりやすい言葉で保育園と幼稚園の違いを説明してくれ、私がどちらを希望するかを尋ねてくれたことがありました。自分が通ってみたい園を選ばせてもらえた瞬間のことを、私はとても鮮明に覚えています。それはとっても幸せな記憶です。

この経験が、実は子どもの権利と密接に関わっている、ということに気づいたのはつい最近のことです。子どもの権利の重要な柱の1つに、「意見を表す権利」があるのです。日本ユニセフ協会が訳した子どもの権利条約の1節には、こう書かれています。「子どもは、自分に関係のあることについて自由に自分の意見を表す権利を持っています。その意見は、子どもの発達に応じて、じゅうぶん考慮されなければなりません。」

これは「大人は子どもの意見を全て採用しなければならない」ということではありません。大人は、子どもの意見を考慮に入れながら、置かれた環境や能力なども検討し、子どもにとって最もよいと思われる選択をすることが求められている、ということです。

意見を表す権利はなぜ大事?

意見を表す権利を大切にしながら接していくと、子どもは自分の意見をしっかり持ち、想いや考えを表明したり他者と意見交換したりする力がしっかりと身につきます。そうした力は、社会に出てから主体的に仕事に取り組む力として評価されますし、社会問題を自分事としてとらえ、問題解決のために行動する力としても発揮されます。社会で力を発揮するという意味で、意見を表す力は、とっても大事です。

また、「自分の意見を表す力がある」ということは、空気を読んで周りに合わせたり、自分の意見を飲み込んで生きるのではなく、自分の心に素直に生きることができるということでもあります。そんな自由を、一人でも多くの子どもに手にしてほしいというのが、私の願いです。

だからそんな想いを込めて、アクセスは今年も、フィリピンの子どもたちや保護者に、子どもの権利についてのワークショップやセミナーを継続しています。

子どもの権利ワークショップのあと、グループで描いた絵を手にパチリ。農漁村ペレーズの子どもたち。

「子どもとどう接するか」を考える指針として

子どもの権利は、大人にとっても重要な意味があります。「子どもとどう接するか」を考える上で、大切な指針になるからです。

たとえば子育て中のお母さんやお父さんが、どういう育て方をしたらよいかを学ぶ場は、日本でもフィリピンでも、ほとんどありません。自分の体験に基づきつつ、周囲のやり方も参考にしつつ、手探りでやっていくしかありません。そんな中で「愛情をもって育てよう」という想いはあっても、その愛情の表現の仕方が適切かどうかがわからず、迷い悩んでいる人はものすごく多いと思います。

危険な行動をやめなさいと何度言ってもきかない子は、叩いて伝えるしかないのか?将来のためにと熱心に塾に通わせたり小学校受験をさせたりすることは、本当に子どもにとって良いことなのか? 何が適切で何が不適切な子育てなのか、本当にいろんな意見があります。そういう難しい判断に迫られた時、答えを出すための指針(基準)が見当たらないと感じている人は多いのではないでしょうか。

子どもの権利はそんな迷いに対して、「子ども本人の想いや考えを聞いてみよう」という提案をしてくれます。まずは、子ども自身がどう思っているか、どうしたいかを話せる環境をつくる。親は子どもの想いや考えにしっかりと耳を傾ける。子どもの意見に頭ごなしに反論するのではなく、親の考えもその子にわかるような言葉で丁寧に説明する。親が子どもに言うことを聞かせるのではなく、対話を通してお互いの想いや考えを伝えあいながら、今のこの子にとっては何が一番いいのかを判断する。それが、子どもの権利を尊重した子どもとの接し方です。

話し合うだけでは結論が出ないことも多いでしょうし、子育ては私が思うより何百倍も難しいことだと思います。でも、少なくとも1つだけ言えるのは、「自分の意見に耳を傾けてもらえた」という経験は、子どもにとってもポジティブな影響を与えるということです。子どもはそこから、「一人の人間として大切にしてもらえた」というメッセージを受け取るのです。

完璧にはできなくとも

保護者向けの子どもの権利セミナーの様子

子どもの権利の尊重を徹底するのは本当に難しいことです。でも、実際にフィリピンで子どもの権利セミナーを受講した保護者からは「息子との対話を大切にするようになったら、反抗的な態度が減って、親子関係がすっごく改善した」という声が届いています。

完璧にはできなくても、少しずつ対話を取り入れていくだけでも、変化は生まれていきます。まずは子どもの声を聴いてみること、「ああ、そんな風に感じていたんだね」と受け止めることを日常の中で心がけていくことが、最初の一歩になるのではないかでしょうか。

「子どもの権利を指針として子どもと接する」という考え方が、フィリピンや日本を含めた世界中で、当たり前になっていけばいいなと思います。家庭の中だけでなく、学校や児童館、病院や塾など、子どもたちが関わるあらゆる場面で、みんなで少しずつ実践して、その「当たり前」を実現していきたいです。私は残念ながら日常的には子どもと接する機会がありませんが、こんな考え方があるということを周囲の大人に伝え続けていくという役割を果たしていきたいと思います。

(了)

「子ども教育サポーター」になって子どもの権利を届けませんか?

今回の記事でとりあげた子どもの権利に関するフィリピンでの活動は、日本から応援してくださる「子ども教育サポーター」によって支えられています。

年間18,000円で、一人の子どもを1年間、学校に通わせることができます!サポーターの方には、支援するお子さんから、年2回、お手紙が届きます。

一緒に、子どもの権利が守られたコミュニティづくりを実現してください!

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この記事を書いた人

Sayo N

第二の故郷であるフィリピンで、「子どもに教育、女性に仕事を」提供することが仕事。誰もが自分のスタート地点から、自分のペースで成長できるような場づくりを大切にしています。アクセスの事務局長です。趣味はライブに行くこと。