医師として感じた、マニラの医療事情

トンド地区の奨学生を診る喜多野先生

元ツアー参加者で医師である喜多野章夫さんが、2019年9月にアクセスの事業地にて約100人もの子どもたちやその家族を診察してくれました!喜多野さん自身にレポートを書いていただきましたので、ぜひご一読ください。

海外医療支援に関わっていく宣言をしてから

お久しぶりです。2016年の9月にスタディーツアーに初参加させて頂いた喜多野です。皆さんには「あきおさん」と呼んでいただいてました。あの熱いツアーでの最後に、日本での診療所を閉じてセミリタイアし、海外医療支援に関わっていく宣言をしましたが、来年いっぱいで本当に診療所外来を閉院する事にしました!1000人近い患者さん一人一人、来年1年をかけて他院への振りかえ、紹介をこなしていくつもりです。

2016年9月のスタディツアー参加者の皆さんとともに(喜多野さんは後列、右から2人目)

依頼を受けて即答!フィリピンでの医療支援

そして今回、アクセスのスタッフの皆様のおかげで貴重な経験をさせて頂いたので報告させて頂きます。

「パヤタスの幼稚園で年に一回、園児の健康診断をしたいと思うのですが、」とのメールを今年3月に野田さんから頂き、「行きます!」と即答。以前にフィリピンで医療支援活動をしたいと話していた事を覚えて頂いてた事にも感動し、どうせ行くなら私のライフワーク、総合診療→在宅往診診療も現地で実践しましょうと提案し9/14〜9/17 マニラのトンド地区、パヤタス地区に行ってきました。

ジェリックや石川さん達、現地スタッフの方々と、野田さんにもご協力頂き2日間で約100名の健康診断と訪問診療ができました。今回は私の高校2年の長女も手伝ってくれてかなり充実した滞在になりました。

協力してくれたトンド地区のスタッフや住民の方々と。

フィリピンではご存知の通り公的医療保険が行き届いておらず、生活保護もありません。足の傷が膿んで腫れ上がっても、咳で夜一睡もできなくても、夫が急に半身不随になっても、(家計が厳しい場合)病院にかかるという選択肢はほぼありません。都市スラムであるトンド地区やパヤタス地区の人が病院にかかるには下手すれば月の稼ぎに等しいくらいのお金がかかるわけですし、場合によっては前払いしないと診てもらえない、治療費を払えなければ家に帰してもらえない、というのも厳しい話です。

もし今の日本の医療体制が同じであったら…と想像した事はありますか?若者ならまだしも、子どもや高齢者になればその不安はかなり大きいと想像できます。医療に関するセーフティーネットの欠如は、大袈裟にいえば毎日が「明日があるかは分からない日々を暮らす事」になると思います。

かたや日本ではほとんどの地域で急病になれば救急体制が24時間整備され、その時お金が無くてもとりあえず医療を受ける事が出来ます。お金がなければ、たとえ流血していても追い返される、なんて事は、日本ではまずありません。

私が海外医療支援に携わりたいと思った1番の理由。オギャーと生まれた瞬間、今は偶然日本に生まれただけ、国や地域によっては3歳までも生きることができなかったかもしれない。国家体制により、セーフティーネットの有無によって左右される事の不公平さ。日本の病院で保険を使って処方されたものの飲み忘れや余ってしまい、廃棄される薬は分かってるだけでも毎年1000億円以上。これだけでトンド地区とパヤタス地区の全医療費が賄えそうです。

実際に診察をしてみて、園児は大気汚染による鼻炎、喘息はかなり罹患率が高く、不衛生な環境による創部感染や下痢も多かったです。高齢者は腰や膝などの関節痛はほぼ全員、栄養の偏りで意外と肥満率も高く生活習慣病も意外と多かったです。栄養失調で死ぬ事は減っているかもしれませんが、糖質や脂質の過剰摂取による偏食→肥満→高血圧や糖尿病→脳梗塞や心不全は増加してきてます。

今後も可能なら毎年、健康診断は続けていきたいと思います。そして来年いっぱいで(日本の)診療所を閉じると決めたものの、恥ずかしながら再来年からのプランはまだ白紙状態です。それが今1番の悩みですかね(笑)。

漠然とやりたい事はある、必要とされる所に医療を届けたい。ここ数年はインドネシア 、カンボジアなどで仕事の合間を縫って医療支援のお手伝いをしてきました。国境なき医師団などの大きな国際団体に所属する方法もありますが自分の意思では活動できない、やはり自分の目で見て、感じて、考えてやっていきたいと思います。

こんな医者がいる事をお見知りおき頂き、私に出来ることがあればいつでもお声掛け下さい!

パヤタス地区で。診察をしていただいた幼稚園の保護者の皆さんと

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健康診断など、不足するニーズをしっかり把握し、要望に応えていくには、継続的なご支援が必要です。定期的にご寄付くださる方が増えることで、子どもたちのニーズに応じた、長期的な支援プログラムを計画・実行することができます

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この記事を書いた人

Sayo N

第二の故郷であるフィリピンで、「子どもに教育、女性に仕事を」提供することが仕事。誰もが自分のスタート地点から、自分のペースで成長できるような場づくりを大切にしています。アクセスの事務局長です。趣味はライブに行くこと。