今日のライター : 事務局長 野田沙良(のださよ)
アクセスがめざす、「子どもに優しいコミュニティ作り」には、保護者や地域のオトナの協力がかかせません。 今回は保護者の皆さんの声を交えつつ、アクセスのオトナ向け活動をご紹介します!
Contents
集落ごとにプチ・プロジェクト進行中!
「毎日5ペソずつ貯め、1か月したら集落の子どもたちにビタミン剤を配布する」「集落の共有スペースを活用し、共同菜園を開始」そんなプチ・プロジェクトが、2019年半ばからペレーズ地区(フィリピンの農漁村)のいくつかの集落で立ち上がっています。発案しているのはアクセスではなく、子ども教育プログラムで支援を受ける子どもたち(奨学生)の保護者。保護者会の月例会議の中で検討され、いくつものプロジェクトが進行しています。2009年にペレーズ地区で子ども教育プログラムをスタートさせてから10年、保護者間の話し合いや協力が活発化しています。
そもそも、保護者会って何のため?
アクセスの子ども教育プログラムは、就学支援を活動の軸に据えつつ、広い意味で子どもたちの成長をサポートするものです。子どもたちが、虐待やいじめといった権利侵害を経験することなく健やかに成長できるようなコミュニティを、地域のオトナたちと一緒に作ることが大切だと考えています。そのため、保護者に子どもの権利を学んでもらう場を提供し、また権利保護のためのアクションを保護者自身が実践できるよう、後押ししています。そんな学びの場であり、また、アクションに向けた話し合いと実践の場でもあるのが、保護者会です。
奨学生数が198人まで増えた2019年度は、上の図のような組織構成で活動。年1回の役員選挙で選ばれた保護者が中心となって、総会・役員会・月例会議という3つの集まりを開いています。
2019年度総会では、5つの議題を
年1回の総会は、小学校や公民館などを借りて開催しています。2019年6月29日に開催した総会には145名の保護者が参加、セネナさん(奨学生キング・トファーくんのお母さん)による開会のお祈りで始まりました。この日の議題は、以下の通りです。
総会 5つの議題
- 勉強会「学習習慣を身に着けさせるコツ」
- 集落リーダーからの報告事項
- 保護者会のルール
- 役員選挙
- 補習授業のスケジュール確認
学習習慣をつけるための3つのコツ
毎日勉強する習慣が身に着くように・・・
1.勉強する場所を決めておく
2.勉強をする時間を決めておく
3.勉強中はテレビやラジオを消す
この日、最も話し合いが盛り上がったのが、学習習慣について。各家庭の悩みを打ち明けるとともに、うまくいった方法についても活発に話し合われました。「うちは、部屋が一つしかありませんから、子どもたちが大好きなドラマが始まると、宿題どころではなくなってしまうのが悩みでした。今後は宿題の時間を決め、終わったらテレビを見てもいいという決まりにしようと思います」と、早速学びを生かそうという声があがりました。
決議された保護者基金の活用ルール
1.奨学生やその家族が病気になり、治療費等が工面できない場合、基金から無利子で借りることができる。
2.上限額は500ペソ、1か月後に返済。
3.希望者は、集落リーダーとともに会計担当者を訪ね、事情を説明する。
保護者基金のルールを決議した役員会
7月24日に開催された役員会には、総会で選出された新役員が参加。子ども教育プログラムの規則をおさらいした後、「保護者の約束」を宣誓しました。
保護者の約束
子ども教育プログラムのメンバーとして、私は次のことを大切にしていきます。
・参加すること
・尊重すること
・誠実であること
・決まりを守ることまた、あらそいのないコミュニティの実現に向けた、個人の成長・組織の発展のため、ルールを順守することを誓います。
子どもたちの状況報告の際には、その時期に大流行していたデング熱について、子どもたちの健康状態がシェアされました。デング熱についての話し合いの中で、「医療費の工面に苦労した」という声が複数上がったことから、この日は「保護者会基金」の使い道について大切な決定が行われました。
子ども教育プログラムでは、年度末に学校に納付するためのお金として数百ペソの教育支援金を各家庭に現金で支給しているのですが、保護者が会議を欠席すると、1回あたり50ペソ(約100円)がその支援金から差し引かれ、基金として積み立てられるというルールになっています。このルールは、2017~2018年にかけて保護者自身が話し合いを通じて決めたもので、現在全体で1,750ペソ(約3,600円)の基金となっています。この日の役員会では、この基金を「奨学生や家族が病気になった時の緊急時基金として活用していく」ということが決まりました。
おしゃべりから始まるエンパワメント
集落ごとに開催している月例会議は、5Ps(ファイブピース)と呼ばれるおしゃべりタイムからスタートします。タガログ語でPから始まる5つの話題(家族、愛、経済的なこと、個人的なこと、組織的なこと)から1つを選び、全員が順番に話すというものです。
「最近、夫婦げんかしちゃって」「育てていた野菜が盗まれた!」といった報告が、日々の困りごとや集落内のトラブルをみんなで話し合う良いきっかけとなっています。アクセス・フィリピン理事の提案で導入されたこの5Psのおかげで、保護者の発言が増え、より充実した話し合いができるようになったそうです。
もう1つ重要な議題が、集落の子どもたちの近況報告です。先日はある集落で、「最近Rちゃんが学校を休みがち」と報告がありました。母親が出稼ぎに出たことで、家庭内がうまく機能していないことが影響しているようでした。その後、集落リーダーがRちゃんの兄姉と話をし、兄姉が朝食を用意したり交通費を工面するようになったことで、Rちゃんは毎日学校に通うようになりました。このように保護者会は、困難な状況に陥ってしまった子どもたちを早期に見つけ出し、保護者が分担・協力して問題を解決できるよう話し合う場として機能しています。
冒頭で紹介したプチ・プロジェクトも、月例会議のこうした話し合いの延長上で計画されたものです。共同菜園やビタミン剤の配布だけでなく、「ひと時でも悩みを忘れられるよう、みんなでピクニック行こう!」といった楽しいプロジェクトもあります。保護者の皆さんを「支援を受けるだけの弱者」にしてしまわず、「子どもに優しいコミュニティのために行動するオトナ」へとエンパワメントする。それが今、現地スタッフが最もがんばっていることです。
(了)
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今回の記事でとりあげた子ども教育プログラムは、日本から応援してくださる「子ども教育サポーター」によって支えられています。
年間18,000円で、一人の子どもを1年間、学校に通わせることができます!サポーターの方には、支援するお子さんから、年2回、お手紙が届きます。
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