フィリピンの大先輩に恩返しするために【理事長の気まぐれ日記】

アクセス理事長の野田さよです。私が尊敬する大先輩2人(故人)についての想いを言葉にしてみました。ぜひ最後まで読んでみてください!

フィリピンに通い始めて23年になります。

この間、本当にたくさんのフィリピン人の方々と出会い、そのほぼ全員から、とても親切にしてもらってきました。なので、フィリピンは私にとって文字通り「第二の故郷」。実家であり、大切な人たちがいる、悲しい思い出もうれしい思い出も山盛りたくさん詰まっている場所です。

その中で、「心から尊敬できる人」にたくさん出会ってきました。今日はそのうちの二人、もう会えなくなってしまったビルマさんとアイダさんについて書きます。二人は、私が一生尊敬し続けるであろう女性たち(アテ=お姉さん)です。

ビルマさん:スラム住民の当事者として地域の人々を支え続けた

アクセス現地スタッフのための日本スタディツアーで来日し、理事2名とともに取引先のフェアトレードショップを訪問した際のビルマさん

ビルマさんは貧しい農村出身で、生き延びるためにマニラに出てきて、スラム住民となった女性でした。小学校を出たたあと独学で英語を習得し、NGOアクセスの職員・理事となって長年活躍されました。私がフィリピンで現地インターンをしていた時代、ビルマさんは母のように私の面倒を見てくれていました。

近所の親子がどうしても食べるものがない時、ポケットマネーでお米を買って支えるような人でした。私たち日本の学生がスラムにホームステイする夜は、毎回必ず徹夜で見回りをしてくれました。スラムに自力で建てた自宅を2度も火事で焼失し、一時は本当に憔悴しきっていましたが、それでも自分以上に困っている人たちのために立ち上がり、労苦を惜しまず働いた人でした。

ビルマさんとは一時期関係がこじれてしまって、会えない時期もありました。それでも時間が関係をほぐしてくれて、亡くなられる前に再会し、ハグして和解を喜び合えたことが本当に救いでした。

アイダさん:看護を学んでからNGOへ

右下にいる眼鏡をかけた女性がアイダさん

アイダさんは看護学を学んでからNGOで働いてきた、聡明な女性でした。私が出会った頃は、被災地支援NGOのスタッフとして働きながら、アクセス・フィリピンの理事長として重責を果たされていました。

フィリピンでは、社会問題の解決のために行動する活動家・NGO関係者が、失踪したり殺害されたりする事件が後を絶ちません。そうした動きが今よりも酷かった時代、アイダさんも仲間を失った経験があるらしい…と、伝え聞きました。命を狙われるリスク、仲間を失う痛みと隣り合わせの環境で、それでも絶対に諦めることなく活動し続けた人でした。

アイダさんは、私に会う時は必ず、フィリピンの伝統的なお菓子をお土産に用意してくれ、笑顔でハグしてくれました。揺るがない信念を持った、深いやさしさを持った、とても忍耐強い人でした。

もう一度会えるなら伝えたい。

ビルマさんやアイダさんは、無知で経験不足で生意気だった私を受け入れて、対話や背中でたくさんのことを教えてくれました。二人が亡くなって何年もたった今、やっと私は、どれだけ二人がすごい人たちだったのかを思い知り、この感謝を十分に言葉にして伝えられなかったことを悔いています。

もう一度会えるなら、未熟だったころの私の愚行を詫びたいし、思いっきりハグして、心から感謝を伝えたい。「I love you ate!」と伝えたいです。でももう、二人とこの世で会うことはできません。

*ate はタガログ語で「お姉さん」という意味です。

私が二人から学んだこと

ビルマさんとアイダさんは、貧困や人権侵害の中で苦しんでいる人たちの立場から物事を見て、行動する人たちでした。「できることには限界がある」と知りながらも、途方もない道のりだとわかっていても、行動し続けることを辞めませんでした。

私は、そんな2人の姿勢を受け継ぐ思いで、今アクセス日本の理事長をしています。
そして、二人に伝えたかった感謝の気持ち、返したかった恩を、今を生きる子どもたちに「恩送り」し続けようと思っています。

アクセスには、私と同じように「フィリピンの人たちにお世話になった、だから恩送りをしたい」と思う人たちがたくさん集っています。これからも、そんな人たちのつながりを広げ、フィリピンと日本のあったかい関係づくりを皆さんと一緒に続けていけたらと思っています。(まだフィリピンに行ったことがないという方は、ぜひスタディツアーで一緒に行きましょう!)

(了)


「恩送り」の方法として、ぜひ子どもサポーターをご検討ください。

1日60円からのご寄付で、フィリピンの貧しい子どもたちに「教育のチャンス」と「安心できるつながり」を届けることができます。支援するお子さんの成長を写真やお手紙で見守れる、教育里親制度です。

この記事を書いた人

Sayo N

第二の故郷であるフィリピンで、「子どもに教育、女性に仕事を」提供することが仕事。誰もが自分のスタート地点から、自分のペースで成長できるような場づくりを大切にしています。アクセスの事務局長です。趣味はライブに行くこと。