クオリティ・コントロール~連載『フェアトレードの裏側』③

フェアトレード事業部 竹内彩帆

連載『フェアトレードの裏側』
① フェアトレード事業にかんする、小さなケンカ
② 「目がない」
③ クオリティ・コントロール ←今回

カード「プレゼントベア」のくまに片目がなかったこと、その原因が「片目の方がかわいいから」という生産者の判断だったことに対し、「勝手に判断をしないでほしい。思ったことがあれば、提案・相談してほしい」と日本側から伝えた後、生産者の表情は全体的にこわばり、「日本側の言われたとおりにする」という発言が聞かれました。

規格を守ることと、「力関係」

カードであれココナッツ商品であれ、デザインや規格を決め、それをカタログに掲載してお取引先や購入者の方にお示ししている以上、カタログやオンラインショップに掲載された商品と明らかに異なる商品を納品するのは非常にまずい。購入される方に「両目のくま」が届くことを期待されているのだから(と言っても実際は、くまが被っているサンタ帽子の綿に隠れているせいで、カタログを見る限りでは片目と両目の区別はあまりつかないのだが)、それを勝手に「片目のくま」にしてはいけないということは生産者に伝わったと思います。けれども、「日本側の言われたとおりにする」という生産者の発言が、そうすることの必要性を理解したからというだけでなく、「日本側が言ったことにとりあえず従っておこう」と思ったからではないか、という一抹の不安を覚えました。

アクセスのフェアトレード事業において、カードやココナッツの生産者はアクセスが雇用している「労働者」ではありません。アクセスが組織化しましたが、カード生産者は「Pangarap」(タガログ語で「夢」)、ココナッツ殻雑貨生産者は「Mapayapa」(タガログ語で「平和な」)という生産者団体として、自立的に運営される協同組合であることをめざしています。したがって、アクセスとの関係性も対等であることを基本的な姿勢と考えています。

生産者と商品のお客さまは、このような流れでつながっています。

しかしながら実際、生産者団体が自立的に実施できているのは、商品生産の部分(材料の在庫管理、生産、納品前の検品とパッキング)にとどまり、材料の調達や売上・販売管理、受注・納品といったアクセス日本を含む取引先とのやりとりや、営業などの販促活動は、アクセスフィリピンの現地スタッフが実施しています。

加えて、ココナッツ事業は新型コロナウィルスの感染拡大前は、フィリピン国内での売上がアクセス日本への売上を大きく超えましたが、パンデミックで観光業が打撃を受け、主な取引先であるホテルや空港での売上や、イベント・バザー等での販売による売上が皆無となった結果、フィリピン国内での売上がほとんど見込めなくなりました。カード事業においては、そもそもグリーティングカードの原価(主に生産者への労賃)が高くフィリピン国内で売り出すには高価であり、アクセス日本への売上が9割以上を占めています。

つまり、アクセス日本は生産者にとって、生産者団体の組織化やフェアトレード事業の運営、商品生産にかんする諸々について口出ししてくる「管理者」的側面のみならず、生産者にとっていわば主要取引先「お得意様」側面も持ち合わせている、ということになります。この力関係の存在を、先般の生産者の発言とビデオ越しに伝わる現地の凍った空気感で、私は改めて感じざるを得ませんでした。そして、「対等な関係」を築いていくことの難しさも垣間見たように思いました。

クオリティ・コントロールと、手作りの限界

フィリピンから商品が到着しお取引先に納品するまでに、日本ではボランティアと職員で一点一点検品作業を実施しています。私がフェアトレード事業部にかかわっているこの4年の間に、生産クオリティはとても向上しました。それでも全品検品からサンプル検品(たくさんある商品の中からランダムに数点取り出して、全部OKということにする)にどうしても踏み切れないのは、やはり検品中に大きな不備から小さな修正点などが見つかるからです。

大きな不備と言えば、先に挙げた「ない」問題で、検品を通過してお届けしたはずのカードでも、お取引先から「MERRY CHRISTMASの”Y”がないです・・・」と連絡をいただいたことがありました。また、バースデーカードの「HAPPY」の”Y”がついていないのを検品中に発見(またもや、”Y”)。単品で見るとあまり気が付かず違和感がそれほどないのですが、比べてみると明らかにスパンコールやリボンなどの比較的目立つ部分のパーツが貼られていなかったりすることも、検品中に見つかります。

「ない」以外にもデザインに関わる問題としては、例えば、キャラクターもののカードの表情は、かなりしっかり指定しないと表情が生産者によってばらばらになり、「ホワイトベア」というクリスマスカードは、下三角の目を貼り付ける角度によって、白くまは怒っているように見えたり、泣いているように見えたりします。ほかにも、鼻や目の大きさ、顔のパーツの間隔により表情が変わってくるのですが、できるだけ指定しないとカードによって表情がまちまちになります。

ホワイトベア

世の中にあふれる商品には規格というものがあり、数ミリ単位で決められているものもあります。グリーティングカードについてもココナッツ殻雑貨についても規格やデザインを決めて、できるだけ再現性高く実現させることを生産者には求めています。とはいえ、人間が手で作っているもの、またココナッツは自然由来のものについて、数ミリ単位の違いをどこまで追求すべきか、ふと考えてしまうことがあります。もちろん手作業で作っているもので数ミリにこだわっている商品や作品も存在していますが、どれだけ丁寧に作ったって、機械で作ったもののように同じような商品を量産することはできません。

私たちの商品づくりにおいて、品質管理の側面から見てどの程度商品の画一性を求めるのか、「個性」はどこまでを認めたらよいのか。フィリピン側も日本側も、商品生産における管理スキルやシステムという点でまだまだ未熟な点があるとはいえ、何年かこの仕事をしていてもまだ明確に答えが出ないまま、取り組めるところからの改善や改良を進めているというのが現状です。

紙の色が、定まらない。

アクセスのグリーティングカードの特徴の一つが、ごわごわとした手ざわりと見た目がぬくもりを感じさせる、現地でつくられた手すき紙を用いていることです。アバカ(マニラ麻)をはじめとした植物の繊維などをすきこんだ手すき紙で、アクセスでは25色を組み合わせてカードを生産しています。

この手すき紙はフィリピンのルソン島本土にある紙生産団体で作られているものを購入しているのですが、この手すき紙も手作りならではの影響か、なかなか安定しません。昔は、手すき紙の作成段階でかなり大判のものを作成していた結果、一枚の紙の中で厚みがところどころ異なり、持ったらヘナヘナして破れてしまいそうな紙ではカードは作れないということで突き返したこともあったそうです。カード生産に足る品質の紙を確実に入手できるよう、紙の購入のたびに紙生産団体までアクセスのスタッフがわざわざペレーズから本土に紙のチェックと買い付けに出向いて調達することもありました。

年月を経ながら紙生産団体のスタッフともコミュニケーションを重ね、少しずつ紙の質も安定してきたので、現在では、生産後の紙を写真でやり取りし、紙の色を現地生産者とスタッフで確認、よしと判断されてたものを発送してもらう、という方法をとっているようです。

手すき紙も手作りゆえ、多少の色の変化が発生しうることは理解していますが、この夏は、こちらが持っている色サンプル(昨年までカードに使用していた手すき紙の色)と同じ品番のはずにもかかわらず明らかに異なる色の紙を使ってカードが日本に納品されてきました。通常、品番が同じでそれまでに使用されていた色と異なる色の紙が納品されてきた、あるいは紙生産団体からの写真で判明した場合、カードの生産に入る前に現地スタッフから日本のスタッフへ相談の連絡が入るのですが、そのカードについては生産者と現地スタッフが日本側への相談を忘れて生産に入ってしまったとのことで、カードが日本に到着して段ボールを開けた私たち日本スタッフが「なんだこりゃー!!」と驚いたのでした。

現地スタッフが紙の色が異なると感じた場合、並べて写真を撮り、メールやMessengerで相談してくれる。カードのデザインへの影響を考えて、使用の可否を判断。

またある赤い色の紙については、もともとの色サンプルより明らかに明るすぎる赤になって生産者のもとへ納品されてきました。ほかにも少しずつ色の異なる赤い紙を異なる品番として使用していますが、代用として使用するにも、どの品番の赤色にも帯に短したすきに長し。「この紙は使えそうにない」と紙生産団体に突き返し作り直しを依頼すること2~3回・・・最終的にカードに使用しても元のイメージを損なうことはなさそうな色に近づいた赤い紙が届きましたが、この紙の作り直しとやりとりの作業によりカード生産の納期がずれ込み、日本国内のお取引先への納品に影響が出ました。

紙生産団体のスタッフ曰く、気候や湿度によって色の出方が安定しなかったとのことですが、毎年同じデザインのカードを生産していくにあたって、毎年のように色が変わりカードから受ける印象が変わってしまうのは困ります。現地スタッフに紙生産団体スタッフとのコミュニケーションを継続してもらい、紙の品質や色を安定させることについても相談をしていかないといけないな、というのが今年の気づきであり、クリスマス前のドタバタの一面です。

PangarapやMapayapaが自立的に運営される生産者団体となり、アクセス日本以外の世界に取引先を作ることができれば、アクセス日本からの管理的な側面も売上シェアも相対的に小さくなり、対等な関係により近づいていくことができますが、それはまだまだ道半ば。日本できちんと売り上げを立てられるような品質やデザインを保つこと、「日本側の言う通りに」という”従順”な取り組み方ではなく生産者自身が自分たちの仕事に納得感を持つこと、そして自立的に生産に携わり事業を運営していくことを目指すのは、ごく小規模な事業であるにもかかわらずとても難しいと感じています。

(連載『フェアトレードの裏側』④へつづく)

「クリスマスにかこつけて」

直接顔を見て言えたら苦労はしない。自分でも気がつかなかった気持ちを、文字にしたためて初めて知ることがある。口頭だとうまく言えないけれど、頭で整理しながら文字に起こすとスムーズに言葉を紡ぐことができる。頻繁に連絡を取り合わなくてもいいけれど、年1回くらいのやりとりで関係性を続けたい。溢れる気持ち、いつもの「ありがとう」じゃ伝えきれない・・・

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