外出禁止規制が緩和されたフィリピンの今

スタッフの聞き取りに笑顔で応じてくれた、奨学生のお母さん(アラバット島ペレーズ町)

新型コロナウイルスが世界中に影響を及ぼす中、フィリピンでは医療体制が脆弱なため、かなり厳しい感染拡大防止策がとられてきました。3月17日に外出禁止令が発表されて以来、マニラ首都圏を含むルソン島周辺で何千万人もの人々が、2か月以上も外出できない日々を余儀なくされていたのです。

本稿では、5月中旬以降の、フィリピンの状況と変化をお伝えしたいと思います。
3月から5月にかけての現地の様子は、下記の記事をご覧ください。

規制が緩和され、人々の仕事は

地域によって時期に差はありますが、6月に入ってから規制は少しずつ緩和されています。それにより、セブ市を除くほとんどの地域では、大人(20~59歳)は仕事のための外出が一定程度可能になりました。政府は「感染拡大防止対策を取ったうえで操業してよい業種」を指定しており、その上で、各自治体がより細かいルールを定めています。

アクセスの事業地である農漁村、アラバット島ペレーズ町は、住民の大半が農民か漁師です。ココナツ農民の場合、厳しい外出規制のあった3月~5月の間、人気のない場所での収穫や加工はできましたが、仲買人が買い付けに来られないため、収入が途絶えていました。漁師の場合も、小さな船で漁に出ることはできましたが、漁港や市場が閉鎖されていたため、魚を売ることができませんでした。普段から、夫が獲った魚を村の中で行商してきた女性は、「規制が厳しかったころは、村人誰もが収入が減っていたので、なかなか魚が売れませんでした。」と話します。

感染者数が多いマニラ首都圏では、また異なった難しさがあります。6月中旬から操業可能な業種は増えたものの、公共交通機関の再開はまだ部分的なため、多くの人々が通勤手段がなく復職できていません。感染の危険を感じながら、何時間も歩いて出勤する人も少なくないといいます。フィリピンの庶民の足であるジープニー(乗合ミニバス)の運行はごく一部しか許可されておらず、ジープニー運転手の中には、生活に困って路上で物乞いをする人も出ています。

アクセスのスタッフたちの奮闘

アクセスの現地スタッフは、そうした制限された環境の中で、さまざまな工夫をしながら活動を続けています。農漁村ペレーズや、都市スラムのトンド地区に暮らす現場のスタッフたちの努力と工夫があるからこそ、私たちの活動は何とか継続できています。

ペレーズ地区で子ども教育プログラムを担当する3人のスタッフの場合、役場に許可をとった上で月曜~水曜の週3回は事務所勤務をしています。木曜・金曜は、子どもたち(奨学生)が暮らす村の議会に許可をとり、子どもたちの家を個別訪問して面談などを行っています。しかし、保護者会や補習授業、セミナーといった集まりについては、いまだ許可が下りておらず、活動を延期しています。

その一方で、普段ならマニラ事務所に出勤していたスタッフたちは、公共交通機関が制限されているため、今も在宅ワークを強いられています。ペレーズ地区の責任者であるランスは、マニラに出張で来ていた間に外出禁止令が出てしまいました。規制が緩和された今も、マニラ首都圏から外に出る移動はかなり規制されているため(警察・行政などが発行する、「過去14日間に新型コロナウイルスらしき症状がなかった証明書」などが必要)、今もペレーズに戻ることができず、マニラ首都圏内の友人の家で居候生活をしながら在宅ワークを続けています。

活動時は、マスクとフェイスシールドを使っている、トンド地区在住スタッフ

不自由な環境の中で、電話やメール、メッセンジャーなどを駆使してコミュニケーションをとり、日々変化する状況に対応しながら、支援を必要とする人々の声に応じようと奮闘している現地スタッフには、本当に頭が下がります。

子どもたちの教育はどうなる?

外出禁止令が出されて以降、すべての教育機関は休校となりました。現在も、20歳未満の子どもたちの外出は許されていません。(ただ、規制が緩和された6月以降、ペレーズでは庭先で近所の子どもと遊ぶくらいは、できるようになったという話を聞いています。)

フィリピン教育相は、本来なら6月1日から始まる予定だった新学期を延期しており、8月24日からスタートするとしています。また、8月からの授業も当面は登校はさせず、オンライン授業とプリント配布による家庭学習のどちらかを各家庭が選択する形で授業を実施する、と報道されています。そんな中、オンライン授業に必要なスキルをもった教員が圧倒的に不足していること、オンライン授業に必要な機材が準備できない家庭が非常に多いことが指摘されており、今後の見通しはかなり不透明です。

現地スタッフはこう話します。

トンド地区担当 ジェリック

オンライン授業を選択できるよう、インターネット通信が可能な機器を提供できたらと思うが、それにはかなりの費用がかかる。仮に機器を提供できたとしても、何らかの理由で壊してしまった場合どうするのか、といった判断が必要になる。

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プリント配布による家庭学習を選んだとしても、自力で学習できる子どもたちばかりではない。親も、子どもの学習をサポートするだけの力がない家庭が多いのが現実。できれば学習支援をしたいが、政府の感染拡大防止策のもと、子どもたちを集めての指導がどこまで許されるのか、今は判断できず、すごくもどかしい。

制限された状況の中で、子どもたちにどんな支援をしていけるのか。今日も現地スタッフとやりとりを続けています。

※フィリピンは6月下旬から、1日に1000~2000人の感染者が確認されています。アクセスの事業地であるアラバット島内でも6月下旬に初の感染者が見つかりました。

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この記事を書いた人

Sayo N

第二の故郷であるフィリピンで、「子どもに教育、女性に仕事を」提供することが仕事。誰もが自分のスタート地点から、自分のペースで成長できるような場づくりを大切にしています。アクセスの事務局長です。趣味はライブに行くこと。