医療ボランティアに参加した高校生の想い

左から、アクセス事務局長・野田、現地スタッフのジェイミー、トンド地区住民の女性(二人)、喜多野花音さん、喜多野章夫さん

2019年9月に、元ツアー参加者で医師である喜多野章夫さんが、アクセスの事業地にて約100人もの子どもたちやその家族を診察してくれた際のレポートは以前ご紹介しました。

その際、高校2年生の娘さん(喜多野花音さん)も同行してくれ、医療活動のアシスタントとして大活躍してくれました。今回は、花音さんによるレポートをお届けします。

はじめに

私は2019年9月14~17日の間フィリピンで医療ボランティアに参加しました。NPO法人アクセスの活動の一環として、フィリピンのスラム街であるトンド地区、パヤタスの幼稚園や民家を回り健康診断等を行いました。私はまだ学生なので薬の整理や写真撮影などの仕事が中心でしたが、現地に来なければわからない事を学ぶことが出来ました。

私がこの活動に参加した動機は将来、医療関係の仕事に就きたいと考えているので、そのような活動に興味があり、一度参加してみたいと思っていたからです。そして、実際に参加してみて、医療への関心を深めることが出来ました。

フィリピンの医療

フィリピンにもPhilHealth(フィルヘルス)という公的医療保険制度とSSSと呼ばれる公的年金制度がありますが、PhilHealthは入院患者にのみ適用され、通院の場合は保険が適用されません(感染症などの一部の病気には適用される)。また、年金制度は60歳以下で月1000ペソ以上の収入がある国民にのみ加入義務があり、疾病や障害もカバーされますが、貧困層にはその義務がありません。そのため通院する場合はすべて自費になります。貧困層の人たちの月収は約3000円であり、一度の通院にかかる費用は約3000円以上であることから、病院に行くことは非常に難しい事がわかります。

ほかにもフィリピンの大学をでて医者や看護師になった人が国内でなく海外で働くというケースが多く、深刻な看護師不足に陥っています。

活動報告とスラム街の現状

日本から飛行機で約4時間。私と父は9月14日の夜にフィリピンに着きました。最初フィリピンに着いたとき正直少し緊張しました。それは、外国で起こった事件や事故や、治安の悪さを強調するような言動をテレビや新聞で見たことがあった為です。

そして翌日から活動が開始しました。一日目に行ったのは首都マニラの近くにあるスラム「トンド地区」です。たくさんの家が密集していて、どこまでが一家族の家なのかわからないほどでした。そして中にはお菓子を売る店や、串焼きを売る店、インターネットが使える店などもあり、住民の仲もよさそうで、この地区の中に一つのコミュニティが出来ていました。二日目に行ったパヤタスは、昔スモーキーバレーと呼ばれる巨大なゴミ山があった場所でした。トンドよりは田舎にありましたが、学校や診療所もあり、一つの町になっていました。ゴミ山が無くなって、今は離れた場所からゴミを集めてはいるということでしたが、トンドほどスラムという印象はありませんでした。

最初に訪れた家は、糖尿病で寝たきりの男性の家でした。男性は足が壊疽しかけている状態で、日本では入院しなければいられないほどの症状でしたが、病院に行くにはお金がかかるため、行くべきか否かの判断が難しく症状が重くなってしまったようです。

幼稚園で健康診断を行い約40人の4歳の子どもたちをみてわかったことは、喘息の子が多いということです。現地の人の話では、近くに電池の炭素の芯を作る工場があり、その噴煙が飛んでくる為空気が悪いことが原因だということです。他にも歯磨きをするという習慣があまり浸透していない為、砂糖で歯が溶けてしまっている子も少なくありませんでした。

喜多野先生の指示に基づき、薬を選び、袋に入れて手渡す花音さん

あまり野菜を食べないという食生活を送っているため、便秘の子が多くいました。また重い荷物を運ぶ仕事をしている男性でヘルニアになっている方もいました。

今回、実際にスラム街に住んでいる人々を見ることができ、彼らの生活について知ることが出来ました。2~3畳ぐらいの狭い場所に家族で住んでいる家や、雨季の雨により床が水浸しになっている家、電気が通っていない家、ゴミの集積場であるため道はゴミだらけ。日本にいては知ることが出来ないことばかりでした。

スラム街に住んでいる人たちの仕事は、ゴミ山から金属などを探しジャンクショップに売ることや、料理店で使うニンニクの皮むき、日雇いの力仕事などが主でした。なので、収入は少なく不安定です。安定した職に就くには大学を出なければ難しい学歴社会のフィリピンでは、お金がなく子どもを学校に行かせることができず、子どもは安定した職に就けず、またその子どもも学校に行けないという悪循環が生まれています。実際、17パーセントの子どもたちが経済的な理由などで小学校を中退しています(2015年のデータ)。

政府とボランティア

日本の医師が海外に行って日本ではできることが出来ないことは多々あります。出来る事としては、人道的救命、健康診断、医療的相談へのアドバイス。出来ない事は営利目的の医療など上記のこと以外は禁止されています。そのため、日本の医師がフィリピンで働くにはフィリピンの医師免許を取る必要があります。

このような規制がある理由の一つとしては、その国の医師を育てる為です。しかし、フィリピンの大学をでて医者になった人で、国内でなく海外で看護師として働くというケースが多いことから、この規制は本来の目的を果たせていないと思いました。

フィリピンでの活動を経て

毎日ご飯を食べて、風邪を引けば病院に行く、学校に行く、私にとってこれは日常ですが、そうでない人が世界にはたくさんいます。そのことについて私は、人間はやはり自分のことを一番に考えてしまうもので、どこか他人事のように思っていました。ですがそれは、自分にはどうすることも出来ない問題からの逃避に過ぎませんでした。

私がこのボランティアに参加した理由は、将来医療関係の仕事をしたいと考えており、誰かの為になにかしたいと思っていたことと、医師である父が数年前からこのような医療のボランティアに参加しており、それらの活動を経て感じたことや経験したことを聞いているうちに、自分の目で見てみたいと思ったからです。

子どもたちの健康診断は他のNPO法人の建てた幼稚園やアクセスが建てた幼稚園で行われました。子どもたちはみんな診察道具に興味津々で、診察が終わった子どもに飴やスーパーボールをあげると笑顔で「Thank you」と言ってくれました。私はこの子ども達をみて、もっと色んな事を学んで自分の世界を広げてほしいと思うと同時に、「学校に行くの面倒だな」なんて思っている自分が恥ずかしくなりました。きっと彼らは私よりもずっと多くの困難を乗り越えてきて、私よりもずっと強い心の持ち主だと思いました。彼らはとても素敵な笑顔をしていました。彼らから強さを私は学びました。

ボランティアはお金儲けのためにやることではありませんが、お金がかかります。しかしその活動を経て学ぶ事も考えさせられる事も沢山あります。私がこの活動をしたことによって世界は大きくは変わりませんが、私が、あなたが、何もしないと世界は変わりません。なので、私は私の出来ることを増やして、自分の出来ることで世界を変えたいです。

(了)

参考文献

アクセス活動報告書 2018-2019


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