200人といっしょに作ってきた、新作フェアトレードカード

アクセス事務局長 野田さよ 

毎年少しずつ、でも着実に、生産・販売量が伸びているアクセスのフェアトレード・メッセージカード。定番デザインの生産を続ける一方で、年に8~9点の新作を発表しています。その新作デザイン開発プロセスには、なんと200人もの人々が参加してくれています。今回はそうしたデザイン開発に携わってくれている皆さんの声をご紹介します。

181人の投票で選ばれた、今年の新作8点!

フィリピンの生産者さんたちが1枚1枚、丁寧に手作りしているフェアトレードカードですが、デザインは日本で行っています。今回は、学生13名と社会人1名がエントリー。その中から、デザイン画での選考をへて、12点のサンプルが出来上がってきました。4月下旬には、アンケート投票を実施。180人もの方々が、「買ってみたい」と思うカードに投票をしてくださり、その結果を踏まえて8点のカードが商品化されることになりました!

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「スノーマンからの気持ち」
おっきなハートを抱えてニッコリ顔のスノーマン。ハート部分の内側に、メッセージを書くことができます。そのままオーナメントとしても飾っておきたいかわいさです。
「Santa and frends.」
窓枠から飛び出してきそうなサンタと仲間たち。内側のデザインにも一工夫があって、ワクワク感のあるカードです。

「さくら」
春先のシーズンに活躍しそうなデザイン。ぷっくり膨らんだ花びらに、刺繍で黄色いめしべを添えました。シンプルで上品な正方形のカードです。

8ヶ月かけて生まれる新作デザインたち

新しいデザインが店頭に並ぶまでには、さまざまな人々が携わってくれています。最初のステップであるデザイン起案に最も貢献してくれているのが、京都精華大学の学生さんたちです。2021年度は、13人から22作品ものデザイン画が提出され、アクセス日本のスタッフによる審査を経て、10作品がサンプル制作ステップへと進みました。

学生さんたちが試行錯誤して作ったデザインサンプルはフィリピンに送られ、6人のフィリピン人生産者が、現地で手に入る材料を用いてサンプルを再現。「ここは難しすぎる」「この素材はフィリピンでは手に入らない」といったポイントは日本に報告され、スタッフからデザイン起案者にフィードバックされます。こうしたプロセスを経て出来上がった作品たちが、アンケート投票に登場するわけです。

今年、アンケート投票に参加してくれた方々は181人。ボランティアやサポーター、寄付者の皆さんは、自ら投票に参加するだけでなく、身近な人たちにも参加を呼び掛けてくれました。今回はそうした呼びかけやSNSでの発信の効果もあってか、「アクセスのカードを今回初めて知った」という方が41人もいらっしゃいました。

アンケート投票結果を踏まえて選ばれた8作品については、現在、6名の生産者さんたちが生産にとりかかってくれており、10月後半ごろに販売をスタートする予定です。

門浦奈央さん(京都精華大学4年)

大学1年生からフェアトレードカードのデザイン制作に携わらせていただき、今回で3回目になります。アクセスのフェアトレードカードの一番の魅力は手作りの温かみだと思います。一枚一枚にたくさんの人の愛が詰まったカードはとても素敵で毎年やりがいを感じます。

しかしその反面、手作りだからこその苦労もありました。例えば、使える材料の種類や量が限られていることです。実際に、私がイラストで描いたものを、手すき紙やスパンコールなどフィリピンの材料を使ってカードにするとうまく作れなかったことも多々ありました。

そんな問題も乗り越えて完成したカードは、私がはじめに作ったサンプル品よりも何倍も素敵で、フィリピンの生産者の方たちの技術力の高さと仕事の丁寧さにいつも驚かされます。

今年の新商品カードも、作る人も、売る人も、買う人も、もらう人も、みんなが幸せな気持ちになるカードになればいいなと思います。

(京都精華大学マンガ学部アニメーション学科所属)

カード生産者 アンジェロ

新デザインのサンプルを再現する作業は大変です。サンプルをよく観察して、どんなパーツをどう組み合わせているのか研究する必要があるからです。パーツごとに型紙を作るのにも、とても時間がかかります。

カード生産者 マリッサ

私はデザインは本当に苦手で。日本から新デザインを提案してもらえる今のやり方はとてもありがたいです。

カード生産者 ダイアン

作っていて楽しいデザインは、「サンキュー・キャット」、「ホワイト・バースデー」、「うさぎ」、「Hope」です。作りやすいというのもありますが、シンプルかつエレガントなデザインだからです。

フェアトレード担当スタッフのサンドラ

生産者はみんな、「今年の新作はどんなだろう?」と、ワクワクしてデザイン案を待っていました。実際の作業では、アルファベット型に紙を切り抜くなど、細かい作業に苦労してはいましたが、パーツを1つ1つ貼り付けて新デザインを完成させていくプロセスを楽しんでもいました。

新商品開発は、生産者の技術を伸ばしてくれます。新しいデザインに挑戦し、いつもより難しく、より繊細な作品にチャレンジすることで、生産者はスキルを伸ばしていっているのです。

ボランティアとともに守ってきたこだわりの品質

「フェアトレードって『高いけど品質はイマイチのアジア雑貨』というイメージがありました。でも、アクセスの商品を手にして印象が変わりました!」という感想をいただいたことがあります。

私たちはフェアトレード事業を始めた当初から、品質を重視してきました。届いた商品は、一点一点すべて丁寧に検品します。小さな不備は日本で修理し、大量にミスが見つかった時は、フィリピンに送り返して作り直しをお願いします。その判断基準は、フィリピンの生産者にとってはとても厳しいものです。それでも、日本のお客さまに愛され続ける商品であるためには、そのこだわりは必要なものだと思っています。その結果、生産者の技術は年々磨きがかかっており、商品が届く度に「また質が上がってる!」とうれしくなります。

そんな検品作業を支えてくれているのが、ボランティアの皆さんです。現在、中学生から社会人まで20名ほどが登録してくださっていて、タイミングの合う日に事務所に来て作業をしていただいています。

作り手を犠牲にしない貿易でありたい

ここ数年、アクセスのメッセージカードをSNSで紹介してくれる人が少しずつ増えています。売上枚数もじわじわと伸び続けており、だんだんとその魅力を理解してくれている人が増えていることを感じます。 (右のグラフは、2017年以降のフェアトレード商品の売上の伸びを示しています。)

2017年以降の売上の伸び(単位:万円)

先日実施したアンケートの結果を見ると、カードを買って下さっている方々は、手作りのぬくもりや、素材の質感を生かしたデザインを気に入って下さっているようです。また、フェアトレード商品を選ぶことで、フィリピンの人たちの暮らしを応援したい、貧困問題の改善につなげたいと願ってくれている方が多いこともわかりした。

そうした期待に応えながら、私たちは「誰がどこで、どんな風に作っている商品なのか」がきちんと見える事業にしていきたいと考えています。びっくりするほど安い品物の生産現場で、労働者の権利が侵害されていることが少なくない世界の中で、「作り手を犠牲にしない貿易」を実践したいと思うのです。働いた時間や仕事の内容に見合った労賃を払う。生産者が健康で安全に働ける労働環境を確保する。生産者が話し合いを通じて、納得して働けるようにする。将来は生産者協同組合として自立する。そんな風に、生産者の権利を守ること・生産者が自ら運営できる力をつけることと、質の高い品物をお客さまに届けることを両立させることで、作る人も、買う人も、贈られる人も、みんながハッピーになっていける事業として、継続していきたいと思います。

プラスの変化を生み出すために

生産者たちは「子どもにミルクを買ってあげられるようになった」「借金しなくてもよくなった」と話します。「家計の重要な決断をするときに、自分も自信をもって発言できるようになった」「自分たちでできることが増えてきた」と話してくれた生産者もいます。フェアトレード事業は、小規模ではありますが、生産者の暮らしの改善と自信の獲得につながっています。

こうしたプラスの変化をもっと多くのフィリピンの女性や若者に届けていくためには、商品の魅力とその背景ストーリーをたくさんの人に知ってもらう必要があります。その一歩として、7月30日にオンライン・イベントを予定しています。動画やトークを通じて、楽しくフェアトレードを感じてもらえる時間になるよう、準備を進めています。どうぞ楽しみにしていてください!

イベントの詳細は、決まり次第、本ウェブサイトやSNS、メールニュースで発表します。参加をご希望の方は、6月25日以降にウェブサイトをご確認下さい。

オンラインショップもぜひご覧ください!

「かわいいなと思うけど、近くに売ってないんだよね」という方に。
全国どこからでもご購入いただけるオンラインショップ、やっています!

季節ごとに商品ラインナップも変わっていきますので、ぜひ時々、覗いてみてくださいね。在庫わずかの品物もありますので、気に入ったものが見つかったら、ぜひお早めにご注文下さい。

この記事を書いた人

Sayo N

第二の故郷であるフィリピンで、「子どもに教育、女性に仕事を」提供することが仕事。誰もが自分のスタート地点から、自分のペースで成長できるような場づくりを大切にしています。アクセスの事務局長です。趣味はライブに行くこと。