ためらいとの闘い―22歳の私にとってのスタディツアー

アペロクルスの路上でアイスクリームを売るお兄さんに写真を撮らせてもらった、22歳の私。
 

今日のライター : 事務局長 野田沙良(のださよ)

2002年8月。
当時大学4年生だった私は、初めてスタディツアーというものに参加し、フィリピンを訪れました。それまで、観光や留学でしか海外に行ったことのなかった私にとって、いわゆる「発展途上国」に行くのは、初めての体験でした。

参加したのは、アクセスの12日間スタディツアー。都市スラム、農村、火山被災地、戦跡をめぐる濃い内容でしたが、私にとって最も印象に残っているのは、2日目に訪れた都市スラム、アペロクルスです。

アペロクルスは、マニラ首都圏にあるスラムの1つで、当時アクセスはそこで教育支援とフェアトレード事業を行っていました。ゴミだらけの、ぎょっとするほど汚い川のそばに、何百もの小さな家々が密集する、川沿いのスラムです。現代の日本では想像もできないような酷い環境におかれている地域。写真を見ただけで、「こんなところに人が住むなんてありえない!」とショックを受けましたし、だからこそ一度は自分で訪ねてみたいと思っていました。

そしてついに迎えた、訪問の日。

マニラ首都圏パサイ市を流れる、トリパデ・ガリアナ川沿いにあるアペロクルス地区

降り立ったアペロクルスは、なんともいえない独特の匂いがしました。写真で見た通り、川にはゴミが大量に浮かび、小さな家が密集するその光景に、言葉を失いました。

でも、何より驚いたのは、そこに暮らす人々のエネルギーでした。

私からすれば、「こんなところに人が住むなんてありえない!」と思った場所。でも実際に、人々はそこに暮らし、働き、笑い、怒り、生きていました。すれ違う人々、特に子どもたちは笑顔で「ハロー」と声をかけてくれ、「モシモシ」と、唯一知っている日本語で話しかけてきました。

「貧困=暗い」、「貧困=ネガティブで受身」という私の中の固定概念は、一発で吹っ飛ばされたのでした。

「衛生的にどうなんやろ」という不安

目に入るすべてのものごとが新鮮でした。どんな表情で歩けばいいんだろう、という戸惑いで頭が混乱しました。「怖がってはいけない」、「拒否してはいけない」、という声が頭の中で響いてもいました。

貧しい人々だからという理由だけで、目の前にいる人々に同情するのはおかしいと思ったし、距離を置くこともおかしなことだと思いました。だから、出会った人々に対して怪訝な表情や暗い表情で接するのはやめようと決めました。

「とにかく笑顔で」
そう、自分に言い聞かせ、スラムの路地を他の参加者やスタッフの方々と一緒に歩きました。

子どもたちが寄ってきて話しかけてくれる。屈託のない笑顔がとてもかわいい。
中には、手足や顔が汚れている子もいました。私たちが歩く狭い路地では、近所の人が洗濯や調理や水浴びをしていて、足元は水浸し。排水がすぐそばの川に流れ込んでいます。犬猫の排泄物も路地に転がっている。

「ここにいる人たちと交流することって、衛生的にどうなんだろう」
「ああーーーそんな風に考えちゃう自分、嫌だなぁ」

いろんな想いがあふれて、頭の中がパンクしそうでした。

「こんなことくらいで病気にならへんし大丈夫」
「え、でもわからんやん、お腹壊すかもしれんで?」
「住民の人たちがふつうに暮らせてるんやから大丈夫やって」
「でも、慣れてない私は病気になりやすいかもよ」
「病気になったって、私は治療できる」
「世界で困っている人たちの力になりたいんやろ?こんなことでテンパってどうすんの」

そんなやりとりが、自分の中で繰り広げられました。

結局私は、「えいや!」と覚悟を決めて、子どもたちや住民の人たちと交流しました。一緒に写真を撮り、手をつなぎ、ご飯を食べ、一緒に眠りました。

その日から私の中で、「貧困」はどこか遠いところにある「貧しい人たち」の問題ではなくなりました。私が一緒に笑ったあの人たちのリアルな現実として、貧困をとらえられるようになりました。

アペロクルスで訪問したお宅にて。2畳ほどのスペースに5~6人家族が暮らしているのが当たり前。

「子どもたちと触れ合うことが怖い」自分との出会い

私にとってアペロクルスでの滞在は、「貧困」を身近な問題として感じられるようになった大きな転機でした。同時に、「子どもたちと触れ合うことが怖いと感じてしまう自分」との出会いでもありました。それはなかなかしんどい経験でしたが、国際協力に関わる者として、避けては通れないことだったと思います。

アペロクルスに限らず、12日間のスタディツアーは、「ためらいとの戦い」の連続でした。便器のすぐ傍で水浴びすることへのためらい、ゴキブリや巨大なカエルが潜んでいそうな場所で寝ることへのためらい、砂がザラつくサンダルを履くことへのためらい。そういう、些細なことにもしんどさを感じる自分に気づき、なりたい自分とのギャップを知りました。

あの時、自分の中のためらいと、しっかりたっぷり向き合って闘ってよかったと思っています。でも、あれを一人で体験しろと言われたら、とても乗り越えられなかったようにも思います。同じような世代の、同じようなことに関心を持った、でも個性ゆたかなメンバーたちと一緒に旅したからこそ、なんとかなった。

自分の中のもやもやや葛藤をちょっとずつ言葉にして、共感したり、刺激をもらったりしながら旅できたからこそ、私は自分の中のためらいと折り合いをつけ、ちょこっと成長して帰ってこれたのだろうなと思います。

(了)

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この記事を書いた人

Sayo N

第二の故郷であるフィリピンで、「子どもに教育、女性に仕事を」提供することが仕事。誰もが自分のスタート地点から、自分のペースで成長できるような場づくりを大切にしています。アクセスの事務局長です。趣味はライブに行くこと。