【インタビュー#2の2】「もう学生じゃないんやで」って

「アクセスに関わる人って、なんで関わってくださっているんだろう?」という素朴な疑問から始まった、アクセス関係者の方々のインタビュー連載企画。アクセスやフィリピンへの想い、ふだんの暮らしのなかで考えていることなどを語っていただきます。

左から、吉井さん、松岡さん、野田

松岡春香さん、吉井瞳さん、そして事務局長・野田さよの対談の後編です。

社会人6年目となった今、それぞれの生活を送る中でアクセスとのかかわり方について考えてこられたことをお話ししていただきました。

(記録:竹内彩帆)

「もう学生じゃないんやで」って

野田:2人は、大学を卒業するまで、チームに所属してボランティア活動もめっちゃがんばってたよね。卒業してもアクセスとの関わりを続けたいと思っているけどうまくいかない、と思ったりしたことあった?

松岡さん(以下、松岡):学生時代は、複数のチーム活動をかけもちしていましたね。でも、社会人になったらガッツリかかわれなくなって、もどかしさがあった。学生の時みたな頻度や深さで活動に参加できないから、 ミーティングに参加しても話についていけないし。

野田:時間的にきつかった?それとも精神的に?

松岡:仕事に追われてたので、精神的に余裕がなかったんですね。つながりが途絶えるのはいやだと思って頑張ろうとしたけど、他方で中途半端にかかわるのもいやだったので、結局チームからは退いて、単発で都合の良いときにボランティアする、というかかわり方になりました。カフェイベントの当日スタッフをしたり、「となりのアジア」(アクセスの会報)の発送作業、フェアトレード商品の検品作業に参加する、といったようなことですね。

でも、「子ども教育支援(旧:奨学金)だけは継続したい!」と思って続けてきました。

子ども教育サポーターとして自分が支援する奨学生が、小学校を卒業するまでの過程を一人見ました。すごい嬉しかった。年々その子が変わっていくんです。手紙の内容も変わるし、写真も表情が全然違う。最初は、幼くて表情が不安そうで恥ずかしそうでおびえて見えたのが、すごい自信満々な表情で笑ってる。そんな彼女の写真を見るだけで、「すごい立派になってる!」って思いました。

気づいたらひとつの濃いつながり、私の家族の一員みたいになっていました。お母さんからも「今度いつ来るのか楽しみにしてるよ」って手紙をもらって。手紙のあて名が、「松岡さんへ」から「まっちゃんへ」に変わったときはうれしかったです。会いに行って顔が認識されていたからかな。

野田:卒業以降、時々単発でボランティアしながら、奨学生を見守るという形は、物足りなさを感じていたというよりは、これはこれでいいかなと思っていたということかな?

松岡:学生の頃は、杉山遼さん(アクセス理事)が社会人ボランティアのモデルだった。社会人でボランティアするなら、あのくらい深くかかわりたいって思ってた。でも、なれない自分が悔しくて、もがいてました。

野田: そんな風に思ってたんやね。私たちとしては、「あなたのライフスタイルに合わせて、細く長くかかわり続けてほしい!」って思ってるんやけど、ボランティアさんの中には、まっちゃん(松岡さん)のように「ガッツリかかわれなくて悔しい」って思っている人もいるんやろうね。

そう考えると、まっちゃんやおかん(吉井さん)のかかわり方は、社会人に合ったいい感じのつながり方やなと思う。つまり、 2人が、 社会人になってからのかかわり方の新しいモデルになってるんじゃない?タイミングが合うときに単発でイベントやボランティアに参加しながら、子ども教育サポーターとして長い目で子どもをサポートする…そんな形でかかわり続けるモデルとして。

松岡さん

松岡:イベントに参加すると、ツアーに行ったばかりだったり、フィリピンにどっぷりハマりそうな現役の学生さんと会う機会もある。いつしかの私みたいと思って(笑)

野田: まっちゃんやおかんくらいベテランの元ボランティアスタッフがイベントに来てくれると、現役の学生さんにとっては本当に勉強になるよね。 それに、私たち職員が直接、学生ボランティアさんに教えなくてもベテランさんたちが教えてくれるし、すごく助かる。特に、バザーでの販売はトーク力が必要だから、2人みたいに社会人経験とフィリピンに何回も行った経験を持っていると、1日だけの参加でもすごく力を発揮してもらえる。

松岡:イベントに行くといろんな人と会えるし、他団体の人とも交流できる機会もあって楽しい。社会人になると、仕事と家の往復で終わってしまいかねないので。

吉井さん(以下、吉井):私の以前の職場は残業が結構多くて、家には寝に帰るだけ、という生活で、それ以外なにもありませんでした。「なにしてんねやろ、自分?」って思ってました(笑)

仕事にのめりこんで、アクセスとのかかわりはほとんどなくなっていく中で、まっちゃんと同じように、「子ども教育支援だけは」と思って続けてきました。「ちょっとでもなにかしらの携わりを持っておきたい」と思うと、子ども教育支援だなって。

私も学生時代はアクセスで複数のチームで活動に参加していました。当時は、事務所に週2回くらいの頻度で入り浸っていたのに、社会人になった途端になくなっちゃうと、もどかしさやむなしさを感じる。そこでかかわっていく方法を考えないと・・・・

松岡:しんどくなるよね。どこかで切り替えないと。

野田:「前とは違うかかわり方でいいんだ」と。

吉井:「もう学生じゃないんやで」っていうのを自分に刷り込ませる作業が必要で、それに1年ぐらいかかった(笑)

学生の時は、みんなと一緒に身体を動かすという方法で活動していたけど、社会人のメリットは「お金を持つことができる」ということ。今の自分は、それを活かして、アクセスにかかわることにしました。

吉井さん

野田:子ども教育サポーターを続けることは、「役に立っている」のを感じやすいしね。

吉井:支援している奨学生から、お手紙ももらえますからね。でも、かつてはお手紙が送られてきても読む気力もなくて。「手紙来た~」っと思いながらしっかり読めない状況が2,3年続いたら、いつの間にかその子が卒業して、 新しい子を支援するようになってました(笑)。

松岡:そういえば、以前奨学生からもらった手紙に「虫歯があって大変」と書いてあったから、歯ブラシと甘い歯磨き粉をプレゼントに用意したんです。で、仲間のボランティアがそれを私の奨学生に渡したときの写真を撮ってきてくれたんだけど、あんまり嬉しそうじゃなかった(爆笑)。複雑な顔をしている写真を見て、「ああ、このプレゼントはちがったかな」って(笑)。

野田:まっちゃんのように、奨学生を家族のように感じてのめりこむタイプと、おかんみたいに、手紙を受け取るのはうれしいけど忙しすぎて余裕がなくて陰で見守っているという人、いろんな人がいるんだね。

吉井:最近は、アクセスの活動に復帰して、会報の発送作業やイベントに参加したり、かなり楽しく過ごしてます。去年イベントに参加した時は、社会人になってから初めて現役の学生としゃべる機会だったんですが、昔の感じがよみがえってきました。すごく新鮮で「この感じー」って(笑)。

松岡:そうやってボランティアに参加すると、新鮮な気持ちになれる。現役の学生さんからすごいエネルギーをもらえる。ツアーに行ってからアクセスで活動続けている学生さんがまだいるってことに、すごくうれしくなりました。

吉井:ツアーで刺激を受けて、帰国してもイベントに参加してきてくれる学生さんたちを見るのがうれしいよね。

野田:二人にとって、昔は継続してなにかのプロジェクトにかかわるのが楽しかったけど、今は単発で参加するという全然異なる楽しみ方があるってことなんだね。その日1日貢献できている楽しさと、若手が頑張っているのに触れられる楽しさ。そして、そこから自分も刺激をもらうことができる。

吉井:「また頑張ろう」って思える。

松岡:エネルギーになる。

吉井:それから、イベントに出ていったときに、他のNPO・NGOの人とふれあう瞬間があると、「やっぱり私、こういうの好きなんだな」って再確認になる。

松岡:社会人になると、限られた時間の中で自分の仕事とかかわりのある分野に集中して、視野が狭くなってくんです。

野田:自分は仕事以外のことにも関心があって、本当は多面的な存在。なのに、多面的な自分のうちの一、二面しか普段は日が当たらないもんね。そんな日常の中で、イベントやボランティアに参加すると、普段は日の当たらない自分の中の別の一面にも日があたるようになる、みたいな感じかな。

松岡:しかも、そういうところに集まって活動している人たちは、なにかしら似ているものを持っている人が多い。普段、仕事ではそんな人ってあまりいないので、話してもぱっとしない。でも、アクセスの活動に行ったら、シェアできるし、想いが伝わりやすいです。

吉井:だから、まっちゃんとこうやって話しているときもそうだけど、アクセスの人たちとまた集まる機会があれば、きっと話が止まらない(笑)。

松岡:みんな変わってないところは、変わってないんですよね。(社会人になったことで)生活スタイル自体は変わってるけど、想いとか考えとか、変わってないから、久しぶりに会って話したり活動したりすると、すごく自分のためになる。

吉井:たぶん、みんな生活の中でどこかしらに「アクセス」があると思います。

野田:その“ふた”を開ける瞬間がないから、閉じたままになっているんだね。

松岡:なかなか”ふた”を開けられなくてもやもやしているところが、あると思います。

吉井:だから、会った瞬間に、あふれ出る。(笑)

「細くて長い」つながり方

吉井:私は、バイトの先輩が、アクセスのツアーに参加していて、紹介してくれました。自分は小学生の頃からフィリピンにずっと行きたかったから、「これや!」と思って参加しました。そこでバイトしてなかったら、その人に出会うこともなかった。

松岡:私は、いとこがツアーに参加していたので、紹介されて私も参加することにしました。

野田:ツアーから帰ってきて、だれかにその経験を話して、話を聞いた人がまたツアーに参加して・・・ そんな風に、ツアーを経験する人が増えていくのは本当にうれしい!

だけど、2人が話してくれたみたいな、ツアー参加者の「つながってる感」や「行ってみて、自分が変わった」感は、実はツアーに参加したことのない人にはなかなか伝わっていなくて、表にも出ていないし見えていないんじゃないかなあって思ってさ。だから、2人にインタビューをしようと思ったんだよね。

松岡:どうやったら伝わるんですかねえ?

野田:まずは、この記事をSNSでどんどんシェアしてもらうことかなあ。このインタビュー記事が、次のツアー参加者につながったり、これから社会人になる学生さんたちに読んでもらうことで、今後のアクセスとのかかわり方についての不安を解消してほしいなって思う。

松岡:社会人になっても、かかわれないことは、ない。

野田:かかわり方は変わるけど、それによって新しい楽しみ方、仕事との両立の仕方があるぞって、感じ取ってもらえたらなあ。

吉井:ここにきて軽作業をしているだけがボランティアじゃないって思うんです。自分がアクセスで買ったココナツのピアス(フェアトレード商品)をつけて外にでるだけでOK。家に帰れば、フェアトレードのココナツの殻に鍵を入れる。身近に置いておくだけでいい。それが、さよさんの思っている「細く長く」って感じじゃないかな。

野田:ボランティアに単発で来ること、アクセスで買った商品を使うなど日常生活にフェアトレードを織り込んでおくこと・・・他に「細く長くかかわる」方法、なんかある?

吉井:Facebookとかコラムとかを見たり、シェアすることかな。

松岡:「アクセスが今これをがんばってます!」っていう情報を、自分もシェアする。

野田:実は、「いいね!」とかシェアとかしてもらえると、私がめっちゃ元気になるんよね。「見てくれてる!」「この人、ほかの人に伝えようとしてくれてる!」って伝わってくるから、すごく励まされる。

松岡:それって、さよさんにとってすごい大きいですよね。

野田:めっちゃ大きい。広報しているとちょっと孤独感を感じる時があって・・・やってもやっても、伝わってるのかなって。「この記事つまらんかったんかなぁ」って思ったり、心配になる。

でも「いいね!」とかシェアしてもらえると、「一緒に頑張ってくれる人がいるから、成果が見えにくくても、がんばろう」っていう気持ちになるんだよね。あと、SNSだけじゃなくて会報もだけど、記事を読んで面白かったら、ひとことコメントや感想をもらえると、今後の記事の改善にもなるし、すごく励みになるね。

吉井:「見えるリアクション」っていうことですね。

笑い声の絶えない、とても密度の濃い時間になりました。

野田:アクセスはこのところ毎年、赤字が続いていてね。

だから、ツアー参加者を増やしたり、ツアーに来た人がサポーターをやめないようにするとか、すでにサポーターの人に追加で子ども教育サポーターになってもらうとか、1人ちょっとずつでいいから協力していただけるように、声かけをがんばっているところなんだよね。

ちょっとまだかかわり方に迷いのある人が、まっちゃんやおかんみたいに「細く、でも長く」かかわってくれるようになったらいいな。

(了)

「子ども教育サポーター」になりませんか?

松岡さんと吉井さんが「社会人になって、これだけは続けたい!」と継続している、「子ども教育サポーター」が、あと17名必要です。

年間15,000円で、一人の子どもを1年間、学校に通わせることができます!サポーターの方には、支援するお子さんから、年2回、お手紙が届きます。

一緒に、卒業をめざしてみませんか?

★アクセスの子ども教育プログラムの特徴

.就学サポート

小学校に通うことの困難な貧しい家庭の子どもたちの就学をサポートし、 小学校卒業をめざします。
※2020年度からはハイスクール(中高校)生への支援も開始する予定です。

.子どもを守るための、保護者への働きかけ

保護者に対し、子どもの福祉と権利に関する啓発セミナー等を提供することにより、保護者会が、コミュニティーの子どもたちの保護のための活動を自主的に行うように働きかけます。

3.生きる力を伸ばす

子どもたちを対象にした土曜日・夏休みの補習授業を通じ、子どもたちの生きる力(ライフスキル)の向上を図ります。

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