寄り添い方の方法~フィリピンの人びとへのメッセージ

アクセス日本事務局 竹内彩帆

「また、あの生活が戻ってくる」

新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、3月から5月の2か月半にわたって、外出規制がしかれたフィリピン。段階的に解除されてくる中、再び厳しいロックダウンが実施されることになったのは、8月初旬のことでした。

今回ロックダウンが実施されたのは、マニラ首都圏と周辺4州でした。フェアトレード事業や子ども教育事業を実施している農漁村ペレーズ(ケソン州)はその対象ではありませんでしたが、子ども教育プログラムを行っているトンド地区の人びと、そしてマニラ周辺在住のスタッフたちは、再び移動や外出の自由を奪われ、生活を制限されることになりました。

「また食事さえ自由に買いにいけないあの暮らしが戻ってくると思うとすごく落ちこんでいる。感染者数が早いスピードで増えて
いるのもとても恐ろしい。貧しい人々の暮らしは一体どうなってしまうのだろうかと心配だ。また、コミュニティで活動している
スタッフもかなり精神的にまいっており、心配だ」

マニラで働くあるスタッフのひどく落胆した様子に、私たちも一緒に戸惑うしかありませんでした。

私たちの寄り添い方

「ロックダウンで外出ができないという状況に対して、日本にいる私たちにいったいなにができるんだ?」

「弱音を存分に吐いてもらう。でもそれ以上どうしようもないから、がんばって耐えてもらうしかない」

これまで、会員・サポータの皆さんと協力してプロジェクト地の人々に食料配布を実施するなど、できることを探して取り組んできたけれど、モノやお金だけではどうにもならない「しんどさ」を感じている人々に、自分たちができることは何なのか。そう考えていた時、一つ見つかったアクションが「声をかける」ということでした。とてもなんでもないことだと思う反面、それでもなにか役に立つかもしれない、という気持ちもありました。

そこでお盆の期間中、アクセスの支援者の方やボランティアさんにフィリピンのスタッフや事業地の人びとへ向けた応援メッセージを募りました。

その結果、12名の方がメッセージを寄せてくださいました。寄せられたメッセージは、このようにレイアウトし、フィリピンの全スタッフに送りました。

フィリピンに送ったメッセージの全体は、こちらのリンクからご覧いただけます。↓

実際、このメッセージを送ることで現地のスタッフや事業地の人をどのくらい励ますことができたのかは、わかりません。制限された生活に現実的に困っている人に対して、メッセージを届けることはなんら現状の大変さを解決するものではありません。しかし、フィリピンに行ったことがない方々も一緒になって事業地の人びとや現地スタッフに思いをはせて、翻訳していて胸が熱くなるようなメッセージを現地に届ける取り組みができたことが、私には意義深いものに感じました。

「血のかよったキャッチボール」をするということ

新型コロナウィルスが拡大し、全世界的に混乱に陥った一年になりました。その中で、私たちの生活は大きく変わり、社会の在り方も、価値観も大きく変化しました。アクセスも、大きな影響を受けました。子ども教育プログラムやフェアトレード商品の生産をはじめとしたフィリピンでの事業の実施が阻まれ、スタディーツアーもできませんでした。その中で、サポーター・会員や寄付者の方、ボランティアさんやつながりのあるお取引先や協力団体・企業の方に様々な呼びかけをしました。

新型コロナ支援寄付、寄付つき商品セット販売、アクセス存続募金・クラウドファンディング、未来チケットプロジェクト、そして今回の応援メッセージ・・・

その呼びかけに、とても多くの方が応えてくださいました。そして、そういった機会を通じて、お返事したり、ご報告したり、コミュニケーションが発生しました。

アクセスにはたくさんの支援者の方がいることは以前から認識していましたが、新型コロナウィルス拡大の影響を受けて今年度このような取り組みを実施し、たくさんの方とメッセージを交わすことで、アクセスの活動に関わってくれている多くの方々が「同じ方向をむく人たちだ」ということがすごく実感でき腑に落ちた感覚を得ました。

というのも、これまでアクセスに関わってくださる方々と自分は「対峙する関係」だと感じてきたからです。サポーターさんも寄付者の方も、商品の購入者の方もお取引先もボランティアさんもみんな、アクセスに対してお金やモノや、力や機会をくださる方です。関係者の方々は、アクセスの活動に共感しているからいろんな形で関わってくれているのですが、その「共感」で以って「支援する」「ボランティアする」というのは、「気に入ったから」「ほしいから」モノやサービスを購入するという行動とほとんど同じものだと感じていました。したがって、関係者の方が「共感」からアクセスに渡してくださるお金やモノや力や機会といったアクセスへの「期待」に対してどのように応えるべきなのかをいつも気にしながら働いてきましたし、そもそもその方たちはアクセスから何が返ってくることを期待しているのか、どのような満足感を求めてアクセスに関わっているのかが全く分からず疑問と不安がありました。

このコロナ禍で私が携わったフェアトレード事業部の寄付つき商品セットとフェアトレード未来チケットの企画は、フェアトレード事業部に関わるボランティアさんとともに取り組んだものでしたが、正直なところ、これまで自分の中で「お客さんだ」と感じて関わってきたボランティアさんたちが、実感を持って「一緒に取り組む側」になった気がしたのを非常に新鮮に感じました。また、ボランティアさんたちから「企画に参加できてよかった」「声かけてくれてうれしかった」というコメントをもらうことで、自分が呼びかけたことが結果的に彼女たちの役に立ったことを実感できて、嬉しくもありました。

同じことが、アクセスの商品を買ってくださる方、個人のお客様のみならずお取引先の担当者やスタッフの方々についても言えます。「素敵な商品をありがとう」「取り扱わせてもらえてうれしい」というメッセージや声をいくつかいただくと、商品の購入者の方やお取引先は「商品を売る/買う」という対峙する関係ではなく、「アクセスのグリーティングカードやココナッツ雑貨を介して、ともにこのフェアトレード事業をつくり進めている人たちだ」ということを感じることができ、精神的に楽になったのとともに、自分の取るべき姿勢に納得がいく感じがしました。

アクセス関係者の方々との「血のかよったコミュニケーション」は、1年前の今頃には想像もしていなかった「人が集えない・群れることができない・人に会うのがはばかられる」この新型コロナの世界において、なおさら心にしみるあたたかい経験であり、また私にとって新しい発見の機会になりました。それを糧に、フィリピンの人びと、スタッフたちとの活動を続けていきたいと思います。

最新記事を、メールでご案内します。

本コラム欄の最新記事をまとめて、月1回のペースでご登録のメールアドレスに無料配信いたします。

「アクセスメールニュース」(無料)に、ぜひご登録ください!

✓登録メールアドレスに無料配信!
✓月1~2回、不定期で発行!
✓カラー写真入りで、見やすい!
✓SNSをお使いでない方にも便利!

「姓または名」と配信ご希望のメールアドレスをご入力の上、「登録する」のボタンを押してください。

必須


必須


この記事を書いた人