コロナ禍での、生きる力を伸ばす補習授業

子どもたちを集めての補習授業が開催できない

新型コロナの新規感染者数が、1日あたり5000人弱のスピードで増加しているフィリピン。子どもたちは今も外出が許されず、学校の再開も10月5日まで延期されることが決まりました。家に閉じこもる生活でエネルギーを持て余している子どもたちと、その対応に疲れ果てる保護者の皆さん。フィリピンの人々誰もが、日々強いストレスを感じています。

アクセスでは、毎年6月から、子どもの生きる力を伸ばす補習授業を月2回、土曜日に実施してきました。(アクセスの支援で小学校に通う奨学生を対象に/詳細はこちらから)しかし、子どもたちの外出が許されない今年は、いつものように集落ごとに集まっての補習授業を開催することができません。現地スタッフたちは、事務所に出勤したり対面でミーティングしたりすることも制限されている中、メールや電話、メッセンジャーなどを駆使して対応を協議。その結果、学習用プリントを配布する形で、補習授業をスタートさせることになりました。

制限がある中でもできることを

農漁村ペレーズ地区のアクセス事務所にて、作業する現地スタッフ

写真は、子どもたちが記入した学習用プリントを回収してきて、内容を確認しているスタッフたちです。(ペレーズ地区では、市町村の境界をまたがない移動と出勤は可能になりました。)

生きる力を伸ばすための最初の一歩として大切なのは、子どもたちが「自分自身について知る」ということ。この日回収してきたプリントは、子どもたちが以下の4つのことについて書きこんで提出するという内容でした。

  • 私の強み
  • 私の弱み
  • 自分の大好きなところ(性格や特徴)
  • 自分が悲しくなること

このプリントに記入されている内容を参考にして、子どもたちの自己肯定感を高められるようサポートしたり、家庭や地域でしんどい状況におかれていないかモニタリングしたりしていきます。

トンド地区では、子どもたちが興味をもって取り組めるように…と現地スタッフが工夫をこらし、アクセスのスタッフが登場するコミック風の学習用プリントを作成しています。

現地スタッフがアプリを使って作成した、身近な人が登場するコミック風の学習用プリント

何事も、いつもの倍の時間がかかる!

普段は、子どもたちへの学用品提供と補習授業の実施のほか、保護者会を毎月開催して、子どもの権利侵害が起こっていないかモニタリングし、何か問題が見つかった場合は、保護者同士で協力して解決できるよう後押ししています。保護者会は集落ごとに10~20人の保護者が集まって開催していて、アクセスから必要な事務連絡をしたり、集落内で起こっている子どもの問題を話し合ったりします。

ですが、感染拡大防止の観点から、今はまだ複数人で集まっての活動が許されていません。そのため、保護者へのちょっとした情報伝達も普段の何倍もの手間がかかります。15人ほどいる集落リーダー一人ひとりに、電話やメールで連絡を取ったり、一対一で会ったりして連絡事項を伝えます。そしてその集落リーダーが、集落にいるほかの保護者に伝えて周る、といった具合です。

先日は、ペレーズ地区中の商店からコピー用紙が消えるという問題も発生しました。公立学校の授業もすべて在宅でのプリント学習になるということで、各地でコピー用紙の需要が高まり、手に入りにくくなってしまったのです。

こんな風に、新型コロナの影響が生活の至るところに及ぶ日々。何事もいつもより時間がかかり、予測できないトラブルが次々と起こります。「とにかく何をするにも、いつもの倍の時間がかかって本当にストレス!」と現地スタッフは話します。

子どもたちのSOSを見逃さないために

奨学生の保護者やスタッフの家族の中には、コロナ禍の影響で失業し、今も収入が断たれたままの人たちが少なからずいます。フィリピンの大手調査機関は、失業率は45%を越え、「5人に4人が、生活が悪化したと回答」と、報じています。

自由に行動できないストレス、経済的な不安、感染への心配。問題だらけの日々の中で、子どもたちも大人たちも、精神的なしんどさを感じています。

そんな中で、模索しながら進めている在宅での「子どもたちの生きる力を伸ばす補習授業」。制限された形ではありますが、子どもたちのSOSをキャッチする場として機能してほしいと願っています。

(了)

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この記事を書いた人

Sayo N

第二の故郷であるフィリピンで、「子どもに教育、女性に仕事を」提供することが仕事。誰もが自分のスタート地点から、自分のペースで成長できるような場づくりを大切にしています。アクセスの事務局長です。趣味はライブに行くこと。