アクセスという職場:EpisodeI/私、事務局長失格でした。~職員・野田の語り~

あなたにとって、アクセスはどのような存在ですか?
「支援先」「ボランティアする場所」「居場所」「取引先・協力団体」・・・・

人それぞれにさまざまなとらえ方やアクセスとの関係性があると思います。

そこで業務を行う人間にとっては、アクセスは「職場」という側面を持っています。
事務局職員が、職場としてのアクセスをどのように捉えているか、「アクセスという職場」と題して、連載します。

第6回は、 いよいよEpisodeⅠ。アクセス日本事務局長・野田の語りの第1回です。

事務局長っぽくちゃんとしなきゃ、と頑張っていたころの私。

この連載では、アクセス職員の中村さんと竹内さんがそれぞれの角度から、「アクセスという職場」の魅力や課題、そしてそこで自分がどうエンパワメントされてきたかを書いてくれました。

中村さんの記事
アクセスという職場:EpisodeⅢ(前編)/ 私という道~職員・中村の語り~
https://access-jp.org/archives/column/workplace-episode3-1

★竹内さんの記事
アクセスという職場:EpisodeⅡ/ 1.仲間がいない。~職員・竹内の語り~
https://access-jp.org/archives/column/workplace-episode2-1

今回からは、職場を管理しなければならない立場である事務局長の目線から、アクセスという職場がどういう課題をどう乗り越えてきたのか、その中で私自身がどうエンパワメントされてきたかを書いていきたいと思います。

今のところの予定では、次のようなタイトルで3回に分けて書くつもりです。

  1.  私、事務局長失格でした。
  2. 「きちんとさん」との決別
  3. 「孤独」から「対話」へ

ということで今回は、「私、事務局長失格でした。」をお届けします。

一年でみんな辞めていく職場

2010年の事務所の様子

私がアクセスで1人目の職員として働き始めたのは、2007年のことです。2010年以降は、常務理事の森脇さん、事務局長の私のほかにも職員を雇うようになりました。しかし。なぜか、森脇さんと私以外のスタッフは、採用から1年のタイミングで必ず、必ず、辞めていってしまうのです。その理由は、「他の仕事に挑戦してみたい」「家庭の事情」「留学する」などさまざまだったのですが、それにしてもあまりにも続きすぎる。次第に私は、「アクセスという職場そのものに、何か大きな問題があるんじゃないか?」と疑い始めました。給料がものすごく安いから?残業はないとはいえ、労働条件良くはないよね。事務所がぼろくて寒いし、トイレが和式だから??などとぼんやり考えつつも、辞めていったスタッフたちの本音がわからないまま、時は過ぎていくばかりでした。

ある年、もうすぐ就職して一年になる職員が体調を崩して、休職することになりました。本人と話していくうちに、体調を崩した背景には、仕事によるストレスがあることがわかりました。このことは、私にとって大きな衝撃でした。さすがにこれはマズイ。何とかしなければ。でも、何をどう改善すればいいんだろう??頭の中を100個くらいクエスチョンマークが飛び交うばかりで、打開策が見えない日々がしばらく続きました。

アクセスは「心が折れる職場」だった

そんなある日のこと。NPOの組織基盤を強化するための研修プログラムに参加した私は、ショッキングなスライドに出会いました。その時に撮ったスライドの写真がこれです。

 <心が折れる職場の特徴>
1.皆優秀で出世頭
2.論理的な説明ができる
3.皆てきぱきと私語をせずに仕事を進めている
4.業務が終わるとさっさと帰る、帰り道のちょっと一杯がない
5.メンタルヘルス講習がなされている

「論理的な説明ができる」「皆てきぱきと私語をせずに仕事を進めている」「業務が終わるとさっさと帰る」・・・これらがズバリ、アクセスの職場の雰囲気に当てはまっていたのです。でも、「論理的なこと」「てきぱき効率よく働くこと」を私は良いことだと思ってきました。終業後にプライベートを犠牲にして、上司といやいや飲みに行くような社風にはしたくない、という個人的な思いもありましたから、最初はこのスライドの意味がよくわかりませんでした。

でもよく考えてみると、思い当たる節がありました。

  • 論理的に的確に説明できないと、問い詰められることがある
  • 雑談をしにくい空気があり、実際、雑談をする人がすごく少ない。
  • ちょっとしたアイディアを気軽に出し合える雰囲気や機会がない。
  • 提出した書類に対して、ポジティブなコメントが少なく、つじつまがあっていないところや不足部分ばかりを指摘される。

それに慣れてしまっていた私は気づけなかったのですが、よくよく考えてみると、とても窮屈で息の詰まる職場になってしまっていたのです。このスライドをきっかけに、そのことに、ようやく私は気づきました。

信じられない、信じたくない。

私の心は、悔しさと申し訳なさでいっぱいになり、消えてしまいたい気持ちになりました。今すぐ自分の蒲団にもぐりみ、「もうこんな仕事辞める!」と駄々をこねたい。

あああああーーーー私なんて事務局長失格や。
もう、嫌や。

でも、ショックだったのと同時に、ホッとしたのも事実でした。
ずっとずっと解けなかった「なぜスタッフが辞めるのか」という謎を解くヒントが見つかったからです。

声を聴くことから

そこから、アクセスの職場風土を少しずつ変える努力が始まりました。幸いなことに、当時入職したばかりだった竹内さんが、自分の気持ちを率直に話してくれる人だったと言うことが、変化に大きく貢献してくれました。

竹内さんが時々「この職場のこういうところが嫌です」とか「この仕事はあまりやりたくありません」といった声を上げてくれたのは、本当にありがたいことでした。なぜ職場のそういうところが嫌だと感じるのか、なぜその仕事をやりたくないか、理由をじっくり聴かせてもらいました。そして、いろいろ意見交換する中で、どうすればより働きやすくなるのかを一緒に模索しました。一般常識やアクセス内の慣例を手放して、達成すべきことに焦点をあてながら、職員にとってやりやすいベストな仕事の仕方を一緒に探す話し合いを何度も何度も重ねたのです。

話し合いの中で、アクセスという職場が抱える課題はとても複雑で、いろんな要素が絡まりあっていることがわかってきました。過度な分業のせいで担当者が孤独感を感じやすいこと。得意不得意に関係なく、任されたものは何でもできるようになることが無意識に期待されており、それが職員をじわじわ苦しめていたこと。30年近い活動歴の森脇さんと、15年以上の活動歴がある私から、入ったばかりの職員がハイレベルな成果を求められてきたこと。わからないこと・できないことは、個人の努力で克服するのが当たり前という風土があったこと。森脇さんと私が夫婦であるがゆえの、むずかしさ…。

「アクセスという職場」の抱える課題はとっても複雑で、絡まった毛糸玉のようでした。

そして私たちは、ここ3年ほどかけて、ちょっとずつその毛糸玉をほぐし、丁寧に巻き直しています。
(まだ完全にほどけてはいないのです。ただ、時間をかけて話し合えばほどけるものであり、それが巻き直せるものなのだと、今の私たちは知っています。)

職員の声を聴く。それは、見たくない現実、つまり「自分の事務局長としての至らなさ」に向き合う作業でした。私にとってそれは、とても怖くて、やりたくない作業でした。でも、「わざわざ想いや考えを伝える」なんていう面倒くさいことをしてくれる竹内さんだったからこそ、これからも一緒に働き続けたくてたまらず、私は怖いながらも、何とか話し合いをがんばりました。それは楽なプロセスではありませんでしたが、一緒に働いている人と心を通わせ、試行錯誤しながら歩むと言う、私にとって初めての経験となりました。

ちょっとは事務局長らしくなってきた私

私は2年間だけ会社員をしていたことがあります。いわゆるブラック企業で、仕事はそこそこ面白かったのですが、労働者の権利はかなり侵害されていました。そんな中、上司に相談してしんどさを解消して働き続けようとは、全く思いませんでした。勇気を出して相談しても、「文句言わずに働け」と一蹴されるかもしれないし、しんどいと感じる自分が弱いだけなんじゃないかと思ったりもしました。そんな中、私は不満を心に秘めながら、別の理由を口にして退職したのです。

多くの労働者はきっと、私と同様に、職場の抱える課題・働きにくさを上司に伝えることはあまりしないのではないかと思います。話し合ったところで、問題が解決されるわけでもないし、とあきらめてしまう人がきっと多いでしょう。

だからこそ事務局長(管理職)は、職員の声を聴こうという努力が必要なのだろう、と今は思います。そしてもし、働きにくさを指摘してくれる人がいた時には、ちゃんと向き合って、問題を取り除く努力をしなければならないのだと思います。

竹内さんと一緒に働く中で、私はそうした苦手分野を少し伸ばすことができたように感じています。

そうした関わりをすることができなかった、過去のアクセス職員の皆さんに対しては、とても申し訳なく思っています。当時の私は、一人のプレーヤーとして働くことに精一杯で、事務局長と言う立場から物事を見て、部下の声に耳を傾けるという姿勢が欠けていました。

今は、私たちのどこがいけないのか教えてくれる職員たちがいます。言いにくいことでも、勇気を振り絞って伝えようとしてくれる人たちです。人としても、事務局長としても不器用な私を受け入れてくれて、私にわかるように丁寧に伝えてくれる職員たちがいる事に、本当に感謝しています。

本当に、私は人に恵まれているなぁとしみじみ思います。

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この記事を書いた人

Sayo N

第二の故郷であるフィリピンで、「子どもに教育、女性に仕事を」提供することが仕事。誰もが自分のスタート地点から、自分のペースで成長できるような場づくりを大切にしています。アクセスの事務局長です。趣味はライブに行くこと。